貝沼竜輔さん(ブリスベン)インタビュー「野球を通じた日豪交流に、より深く関わっていきたい」

第3ラウンドから一気に首位・アデレードを追い上げているブリスベン(photo:ABL Media)

2020/21シーズン、ブリスベン・バンディッツでプレーした元北海道日本ハムファイターズの中村勝投手を現地でサポートした、RK GLOBAL EDUCATION PTY LTD代表・貝沼竜輔さん。その貝沼さんがブリスベンのオーナーになるというニュースが今季、開幕前に飛び込んできた。オーナー職の内容について、今後のチームとの関わりについて、話を聞いた。

 

日本からの窓口になることも

――今回、ブリスベン・バンディッツのオーナーになられた経緯から教えてください。

オーナーといっても筆頭株主ではなく、あくまでも “資本参加”の形です。株式を少しいただいて、「チームに貢献できたらいいな」というスタンスですね。
経緯としては、以前からバンディッツと一緒にお仕事をさせていただいてきたなかで、「もう少し日本とのかかわりを強くしたいんだけど、どう思う?」と相談を受けてきました。私の本業は教育関係になることから、そこで「教育と野球を絡めるのはどうか」と提案しました。そうしたやり取りがきっかけで、「外部のビジネスパートナーとしてではなく、もう少しバンディッツの中に入って一緒に仕事をしてみないか」と話が進みました。一株主とはいえ、その形のほうがより私の真剣度を見せられるのではないかと思い、オファーに応えることになりました。

――これまでバンディッツとは、どのようなお仕事を一緒になさってきたのですか?

2017年に(元北海道日本ハムの)杉谷拳士さん、20年に(同)中村勝さんがバンディッツでプレーしたときにお世話をさせていただきました。またオーストラリア代表チームの監督デビッド・ニルソンが昨年までバンディッツの監督だった関係で、日本のメディアによる彼のインタビューなどもお手伝いしました。あとは、福島から始まって日本プロ野球選手会が振興している「キャッチボールクラシック」(1チーム9名が2分間で何回キャッチボールできるかを競う)という大会に2022年、23年と続けてバンディッツのキッズチームにオーストラリア代表として出場していただいたときです。ほかにも野球アカデミーや、「野球+教育」の分野でも、一緒にお仕事をしています。

――今後のかかわり方には、何か変化が生じるのでしょうか。

NPBの選手から子どもたちまで、日本とオーストラリアとの野球を通した交流に、今まで以上に深くかかわっていければと考えています。希望的観測を申し上げれば、バンディッツに興味を持っていただいた日本の組織や個人の方が視察に見えることがあれば、私がバンディッツ側の窓口となってやり取りをしていくのではないかと思います。

――日本の企業がバンディッツのスポンサーになることで、どんな利点があるとお考えですか?

これはあくまでも、私の個人的な意見ですが。バンディッツには、シーズンを通してアメリカからも韓国からも「インポート」と呼ばれる選手が何人もプレーします。例えば、これから海外戦略を始める野球用具メーカーさんでしたら、オーストラリアだけでなくアメリカの選手に対してもマーケティング活動ができるでしょう。野球に関係のない企業さんでも、ブリスベンとゴールドコーストには日本人が2万人以上在住していますので、在住日本人へのアプローチができるのではないかと思います。

――今後、バンディッツに日本からNPBや独立リーグの選手をコンスタントに呼ぶ可能性も出てきますか?

一株主の立場で大それたことは言えませんが、ぜひそうなってほしいですね。最終的にはチーム全体のバランスを見て、筆頭株主や監督が決めることになるでしょうが、またバンディッツに日本人選手が参加することがあれば、喜んでお手伝いさせていただきたいと思います。

 

日豪の若者の可能性を広げる

貝沼竜輔さん(写真:貝沼さん提供)

――ところで貝沼さんご自身は、野球をしておいでだったのですか?

高校時代まで、野球をしていました。私の代は、ちょうど「松坂世代」と呼ばれた年なんです。私が中学時代、お世話になっていた浜松シニアリーグの同期が、今年東北楽天の一軍コーチをしていた後藤武敏(元西武ほか)。江戸川南シニアの松坂大輔(元西武ほか)、中本牧シニアの小池正晃(元横浜ほか)、小山良男(元中日)といった、のちに横浜高校に進む選手たちとも中学時代に試合をした経験があります。
堀越高校(東京)では私の1つ上の代(1997年)が、甲子園に出場した最後の年になります。私も2年生で背番号「16」をいただき、ベンチに入らせてもらいました。結局試合には出ることなく、そこで野球は辞めましたが。

――野球への情熱がまた沸々とわいてきた部分もあるのでしょうか?

弊社の本業は教育で、そこがメインではあるんです。ただ私も野球を少しは齧ったうえでオーストラリアの野球環境を見たとき、日本とは違ってマイナースポーツとしての野球の在り方から学ぶことは、若い人にとって単純にいい経験になるのではないかと思いました。日本とは真逆の季節であること、芝のグラウンド、この開放感……。そのなかで外国人と共にプレーすることで、野球というツールを使ってコミュニケーションが取れる喜びを得、もちろん英語学習にもつながる。そうしたいいことばかりでなく、価値観の違いも含めて、野球を通じた国際的な学びの場になるのではないかと考えてきました。

――貝沼さんご自身の、これからの夢はなんですか?

野球そのものについては、ブリスベン地域のU-15の代表チームに、日本から数チームとできれば台湾、韓国からも最低各1チームは招待して、年に一度大会が開催できないかと考えています。日本を含め海外の選手がオーストラリアの家庭にホームステイして、チーム同士はエキシビションマッチを行い、バーベキューなどで交流を図る。国際大会というほどのものではありませんが、そうしたイベントを定期的に開催していくのが一番の目標です。
バンディッツのほうでは当然、株主になったからには、チームの優勝を願っています。そして一人でも多く、オーストラリア人の選手がMLBやNPBに入ってくれれば、何よりです。

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