☆入江大生投手(キャンベラ/横浜DeNA)インタビュー☆ 野球選手でいるうちに、野球選手にしかできないことを経験してみたかった

ⒸSMP Images/ABL Media

ルーキー時代の2021年夏、右ひじを手術、その後はリハビリ生活に明け暮れた。満を持して挑んだ今季はリリーフに転向し、チーム3位の57試合に登板。5勝1敗10ホールドと一転、充実のシーズンを送った。そしてオフ、まさかの右腕がABL参加を希望した。

 

マインドの面でも勉強に

――入江投手の場合、前述のような1、2年目の経緯がありましたし、2年目は順調に登板数も実績も伸ばしたことから、なぜここで敢えてABL派遣という変化を求めたのかが、一番気になるところでした。投げすぎを心配する周囲の声もあったのではないですか?

確かに、いろんな心配をして声を掛けてくださった方が何人もいらっしゃいました。でも僕は自分が野球選手であるうちに、野球選手にしかできない体験をしてみたかった。それが、ABLに参加することでした。僕もNPBのシーズンが終わった当初は少し不安もあったんですが、こちらに来てキャバルリー球団がしっかり管理してくださったこと、またトレーナーさんにも目配りをしていただいた結果、(ABL派遣期間の)最後までできたのだと思います。

――「今年じゃなくてもいいだろう」という声もあったのですか?

「投げ過ぎだろう」という声は、やはり一番多く聞きました。でも、それは自分で判断すること。万が一来季故障したとしても、それは自己責任だと思っています。ですから、そこは他人が決めることじゃないと、強い意志をもって来ました。繰り返しになりますが、野球選手であるうちに、何かこういう経験をしてみたかったのが一番なんです。「野球を辞めてからでも遅くはない」とも言われますが、やはり野球選手でいるうちに他の野球選手と交流し、多方面で何らかの体験をすることで、自分自身も何かいいほうに変われるんじゃないかと思って参加しました。

――オーストラリアのプロ野球リーグとはいっても、オーストラリアのほかアメリカ、中南米、台湾など、様々な国や地域の選手がいますからね。世界中の選手と実際ここで交流してみて、何か面白い気付きがあったとか、来てよかったなということをどの辺で感じていますか?

母国語が英語じゃない選手も、プロに入ってからアメリカに行き、英語を難なくしゃべれるようになっています。第二言語の習得は難しいのに、彼らは野球を続けていく中でそれが絶対必要だから、自分の意志をきちんと伝えなければいけないからと、日々努力してきたわけで……。そこは本当に尊敬しますね。逆に自分が“外国人選手”になって、日本に来ている助っ人外国人選手たちの気持ちになれたことでも、大きな発見はありました。あとは、外国人選手には前向きな姿勢が常にありますね。日本人はどちらかというと「失敗したらどうしよう」と考えてしまいがちですが、外国人はそうでなく、「失敗したら、次はどうやってやろうか」という考え方です。僕は根っからの日本人なので、そういうマインドの面でも勉強になりましたし、みんなが純粋に野球を楽しんでいる姿を見て、改めて好きで野球をやっているんだなということが実感できました。

 

新しいことにトライできたのも収穫

――入江投手自身はこちらで、何か新しく試していることはありますか?

あります。が、内容は秘密です(笑)。

――実際、マウンドで試しているんですね。

キャンベラ最終日の試合後、グラウンドに向かって挨拶する入江投手

はい。実際に試合のマウンドで試しています。変化球だけじゃなく、いろいろ試していて、今のところ結果はついてきていませんが、それをこの時期にトライできたことが、来年に繋がるのではないかと思っています。

――日本帰国後は来季に向け、どんな調整をしていきますか?

帰国後はいろいろバタバタすると思うので、それが終わったら、まずはオーバーホールですね。僕は地元が栃木県の日光市という温泉地なので、温泉に入るなどして1、2週間はゆっくり体を休めようと思います。去年のオフはずっとリハビリで、2月の春季キャンプに合わせて1月まで休みなく動いていたので、実質2年、休みなしみたいなものでしたから。その後、“厚木キャンプ”(自主トレ)に向かいます。

――ところで、想像以上にキャンベラのチームメイトに溶け込んでいた入江投手ですが、誰と一番仲よくなれましたか?

本当に「誰」とは言い難いんですが……。みんなに仲よくしてもらった中でも、特にジミー(ボイス投手)は、人の気持ちを理解してくれる能力がめちゃくちゃ高くて、ありがたい存在でした。

――外国人の言葉や気持ちを理解してくれたんですね。

つたない英語でも、ちゃんと意図を汲み取ってくれました。だから、怖がらずにどんどん英語をしゃべれるようになったと思います。そうやって英語でなんとかコミュニケーションが取れるようになったことも、こちらに来てのとても大きな収穫でしたから。

――「別れたくない」と入江投手が言うのも分かります。

日本に帰りたいんだけど、帰りたくない。寂しさでいっぱいです。

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