☆中田賢一投手コーチ(メルボルン/福岡ソフトバンク)インタビュー☆ 異国の地でコミュニケーションをとることから「プロの頭」を磨いてほしい

MAX153キロの速球と切れ味鋭いフォークを武器に、NPB通算100勝を挙げた右腕。23歳でプロ入りし、16年にわたる息の長い現役生活を、2021年に終えた。福岡ソフトバンクホークス三軍投手コーチ(23年は四軍投手コーチ)着任1年目のオフ、精力的に異国のグラウンドを駆け回る中田コーチに話を聞いた。(取材は12月2日)

 

「僕が行くんだろうな」の予感が……

――今回のABL派遣を聞いたときの感想から聞かせてください。

またウィンターリーグ派遣がスタートするという話がチーム内で出たとき、「僕が行くんだろうな」と予感はしていました。コーチ歴も1年ですし、環境の違う場所での野球の教え方など、僕自身の勉強になると思いました。

――メルボルンにも現役時代投手だった監督と、投手コーチが2人います。その中で、中田コーチの果たす役割は?

まずは、ABLのピッチャーの特徴を見るところからのスタートでしたね。メルボルンの投手たちといろいろコミュニケーションをとって行く中で、彼らから何か聞きたいことや、自分が改善したいと思う点を話してもらったとき、僕も気付いた点を自分の引き出しの中からアドバイスする、という形です。

――ソフトバンクの2人を見ているだけではないんですね。

そうです。逆にうちの(風間)球打と三浦(瑞樹)も、こちらの監督さん、コーチの方々の指導を受けています。日本とはまた違った目線での指導方法ですから、僕もそれを聞きながら、勉強させてもらっているところです。

――どういったところに、違いを感じましたか?

あまり細かいところは気にしていないのかな、とは感じますね。ABLの投手はピッチングフォームもある程度出来上がっていて、非常にコントロールも良く、まとまっているんだけれども、手足が長くて自分の身体を扱い切れていない選手が全体的に多い印象です。僕としては「もっとこうしたらいいのにな」と思う点もあるんですが、こちらのコーチは何も言わないようです。

――風間投手、三浦投手に関しては、短いイニングを投げる中で、それなりに調子を上げてきていますね。

風間は春季キャンプの中盤ぐらいにヒジを痛めて、オーストラリアに来る少し前から、やっとゲームを投げ始めたばかり。ですから、まだ球数含めイニングを少しずつ伸ばして行っている段階ですが、いい形で来ていると思います。体力強化を軸に、来季、先発として投げる準備ができてきています。
三浦に関しては、今季、二軍にしっかりと入り込んで先発として回って、試合に投げてきた中で、本人も課題としている「真っすぐの強さ」がここでの最大のテーマ。こちらは真っすぐを狙って打って来るバッターがほとんどですから、そのバッターに対して、どう押し込んで行くか、どう振り遅れを取るか。そこに重点を置いて投げています。試合で投げるイニングが風間と2人で1試合という形になっていますので、イニングが短い分、出力を上げて投げているところです。試合ごとに、真っすぐの強さも出てきていると思いますよ。

 

野球に集中できる環境ができてきた

――ABLでは週末の4連戦しか試合がないことが、NPBのチームが選手を派遣するにはマイナス要素と考える向きもあります。ピッチャーに関しては、いかがでしょうか。

メルボルンでは今回、中6日で定期的に投げさせていただいていて、シーズン中と同様の先発のサイクルが2人ともできています。球数やイニングの面で、三浦は少し物足りないところがあるとは思うのですが、その点、今追求している「真っすぐの強さ」を最大テーマに、短いイニングの中でしっかり力を入れながら投げ切ることを目指しています。

――中田コーチは、このABLにNPBの選手が参加する意味を、どんなふうに感じていますか? どういう勉強ができる場である、と?

今回の2人でいえば、まだ1年目ということもあり、自分の意見や思いを相手に伝えるところが、まだまだ苦手というか、まだ自分を出せていない面がありますね。言葉の通じないキャッチャーに対して、「こういうボールが投げたいんだ」とか「こういう攻め方をしたいんだ」ということを自分から伝えて意思の疎通を図らない限りは、なかなかゲームで息が合いません。当人たちも最初の1試合で、そこは実感したようです。試合が終わるや通訳さんを引っ張って来て、キャッチャーとどんどんコミュニケーションを取っていましたし、登板前々日にブルペンで投げたあとも随分話をしていました。

――成長が伺えそうですね。

キャッチャーとしっかりコミュニケーションを取って、「今日は真っすぐで行きたい」とか「こういう球でこういう攻め方をしたい」といったところを伝え、バッテリーが協力し合って相手を打ち取って行くという思考、それが“プロの頭”だと思うんですが、2人がその思考をさらに深められるように持っていきたいと考えています。彼らも実際こちらに来て、コミュニケーションの取り方もどんどん変わってきています。自分から一生懸命英語を話そうとする姿勢に、チームメイトも優しく接してくれています。チームと馴染んで、野球に集中できる環境になりましたね。

――中田コーチご自身は、メルボルン生活を楽しんでおいでですか?

僕も選手のとき、ドミニカのウィンターリーグを経験しているんです。そのときはスペイン語でしたが。英語については、これもまた現役時代の9年間、年明けの1カ月は毎年グアム自主トレに行っていました。学生時代に勉強していた分も加えて、なんとか受け答えはできているので、1人で電車に乗って街中に出て行ってみています。その点でも、楽しく過ごさせていただいています。

あわせて読みたい