【DeNA-キャンベラ】戦略的パートナーシップのゆくえ(前編)

キャンベラで好投を続ける宮國椋丞投手(ⒸSMP Images/ABL Media)

 

横浜DeNAベイスターズとABLキャンベラ・キャバルリーの間で、2018年7月に締結された『戦略的パートナーシップ』(経緯や内容については、こちらの記事をどうぞ→2018年全3回2019年)。業務提携の大きな柱としてDeNAは同年から、日本のオフ期間にABLでのプレーを希望する選手を、キャンベラに送り出している。

18/19シーズンに始まり2季、順調に続いた選手派遣だったが、20/21シーズンはコロナ禍で中止。翌21/22シーズンはABL自体が開催中止を余儀なくされた。今季は3年ぶりに宮國椋丞、入江大生の2投手がキャンベラへ飛び、ABLのマウンドを踏んでいる。コロナ禍での両球団のやり取り、これまでの成果や今後のパートナーシップについて、同事業に携わるチーム統括本部チーム戦略部・人材開発コーディネーターの住田ワタリさんと、通訳の飯澤龍太さんに話を聞いた(インタビュー内は敬称略)。

 

――新型コロナ感染症の拡大により、2シーズン派遣が中止になっていた間も、キャンベラとは連絡を取りつつ、再開のタイミングを計っていたのでしょうか。

住田 年に2、3度はミーティングを行っていました。そこで、20/21シーズンの状況(※1)についても、詳しく情報は得ていました。

飯澤 21年は、キャンベラのオーナーグループが代わったとき(※2)にもミーティングをしましたね。

【※1】リーグ戦は行われたが、コロナによる州境閉鎖などでたびたび日程が変更された。【※2】本拠地のネーミングライツを持ち、過去5年間チームのスポンサーを務めてきたIT会社・MITサービスを経営するブレンダン・メジャー氏と、過去6年間本拠地の飲食販売などを手掛けてきたイリヤ・マストリス氏が21年4月、共同オーナーに就いた。

――オーナー交代の際、両球団の『戦略的パートナーシップ』も、スムーズに引き継がれたのですか?

住田 前回のオーナーグループのメンバーが一人、新たなオーナーグループの中でも中心的な働きをしてくれていて、こちらとしてはスムーズに移行した感があります。

――派遣再開についてはいつ、どういう状態になったらゴーサインを出す、という条件は決めていらっしゃいましたか?

住田 それはありましたね。まず22年、NPBがシーズンをすべて通常開催すると決まった段階。その時点で、すでに海外は門戸を開いていましたので、オフには派遣を行う態勢でいました。そして6月、ABLが22/23シーズンを開催するとの情報を得たときには球団として躊躇なく、ゴーサインを出した形です。

飯澤 われわれも常にギリギリまで参加を検討していましたが、コロナの状況が日豪ともあまり良化していなかったこともあり、2年間中止になりました。

プロ2年目のオフ、ABL派遣に手を挙げた入江大生投手(ⒸSMP Images/ABL Media)

――今季の派遣再開にあたり、選手側の希望を取るといった、基本姿勢は変わっていないのでしょうか。

住田 その通りです。選手に希望を募った結果、宮國、入江の2名が手を挙げました。

飯澤 選考のプロセスもそうですし、オーストラリアでの過ごし方やサポート体制についても、選手の自主性を重んじる。通訳がずっと帯同するのではなく、基本的に自分たちの力で生活するというスタイルも、以前と変わりません。
住田 オーストラリアに渡り、ABLでプレーして選手としての技量を向上させるだけでなく、異文化体験をすることで選手自身が刺激や気付きを得る、ひいては今後のキャリアの幅を広げることにつながってほしい、そうした目的や方針は全く変わりません。

――これまで2回の派遣で、8人の選手がABLを経験して帰ってきています。彼らの経験値は、ほかの選手たちにも何か影響を与えていますか?

住田 参加した選手たちから、いろいろな情報が周囲の選手にも出ているようですね。今回の2人も実際、過去参加した選手に「どんな感じでしたか」と話を聞いていたそうです。参加した選手からの答えは、「行ったほうがいいよ」と。むしろ「行かない理由がないよね」とポジティブな答えしかなかったと聞いています。

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