☆仲尾次オスカル投手(オークランド)インタビュー☆まだまだ自分は成長中。オファーがあれば世界のどこででも野球を続けたい

アデレード・ジャイアンツとのセミ・ファイナル第2戦に2番手で登板した仲尾次投手(ⒸSMP Images/ABL Media)

 

両親ともに沖縄出身の日本人だが、生まれも育ちもブラジルで、ブラジル国籍を持つ仲尾次投手。日本語で行われたインタビューのあと、「あまり日本語が得意でなくて、すみません」と頭を下げた。本来、インタビュイー側の母国語(もしくは通訳)で行うべきインタビューをこちらに合わせてもらい、恐縮すべきはこちらだというのに。そんな心優しき仲尾次投手が、ブラジルを出て渡った2つ目の国・ニュージーランドで経験した野球と文化について、話を聞いた。

 

ステップアップのためにフォーム修正

――仲尾次投手はサッカー王国・ブラジル出身。なぜサッカーではなく野球を選んだのですか?

自分は最初サッカーをしたかったのですが、父が野球をしていた関係で小さいころから一緒にグラウンドへ行っていて、そのまま野球を始めることになりました。最初はルールが分からなくて、正直面白くなかったんですよ。でもルールを覚えるにつれて、どんどん野球が好きになっていきました。

――プロ野球選手になりたい、ずっと野球を続けていきたいと思ったのはいつごろですか?

11歳のとき、親元を離れてブラジルの野球アカデミーに入りました。そこに入ってから、将来はプロ野球選手になりたい、アメリカであれ日本であれ、とにかく海外で野球を仕事にしたいと思うようになりました。

――そのころは日本語を話せたのでしょうか?

いえ、日本語はたまに勉強していましたけど、やはりずっと(母国語の)ポルトガル語だけでした。

――(白鷗)大学入学と同時に来日し、広島カープに入団。日本でプロ野球選手になる夢も叶えました。今回、ABLでのプレーを選んだ理由を教えてください。

カープを退団したあと、社会人の日本製鉄かずさマジックでプレーしていました。昨年、かずさマジックも戦力外になりましたが、自分はまだ野球を続けたい気持ちが強く、日本国外も含めてチームを探し始めていました。そのときトゥアタラからオファーをいただき、ABLでプレーすることに決めました。

――ニュージーランドにおける野球はブラジル同様、かなりのマイナースポーツです。野球をする環境としては、ブラジルに比べてどうでしたか?

あまり変わらない感じはありますね。ただニュージーランドはプロチームがある分、ブラジルに比べて少し環境も整っていると思います。ブラジルはアマチュア野球しかないので、プロになりたい選手は国外に出る選択肢しかないんですよね。

――トゥアタラでは中継ぎとしてフル回転しましたが、仲尾次さん自身はどこで投げたいという希望があったのでしょうか。

特にこだわりはありませんでした。自分はどのポジションでも、任せてもらった場所で思い切り投げるだけ。先発でも中継ぎでも抑えでも、どこでも全力でいくだけだと思っていました。

――シーズン中は1週間、どんな調整を行っていたのですか?

週末に試合があるので、基本的に月曜日が休み。火曜から木曜までは、前の週の試合で足りなかった部分を中心に、次の登板でよりよいピッチングができるよう心がけて練習していました。トレーニングのほか、ブルペンにも入ってピッチングしていました。日本ではできなかったことにも取り組んでみました。

22年11月25日のシドニー戦でABL2セーブ目を挙げた仲尾次投手(ⒸSMP Images/ABL Media)

――「日本ではできなかったこと」とは? どんなことにチャレンジしたのですか?

投球フォームの修正です。まだまだ使えていない部分、正しい使い方をしていない部分がたくさんありますので、そうしたところを少しずつ直しています。

――それを見てくれたり、アドバイスをくれたりする方はいましたか?

広瀬トレーナーや、コーチの方々ですね。時々、選手同士で意見交換をすることもあります。そういった面も含め、とてもいい環境で野球ができたなと思います。

――フォームを修正する、一番の目的はどこにあったのでしょうか。

ひと言でいえば、強い球を投げられるようにすることですね。自分自身が同じ状態のまま停滞してしまわないよう成長を続け、上のレベルにステップアップして活躍するための投球ができるようなフォームを追求しています。

 

NPB時代とは変えたABLでの配球

――試合のとき、ブルペンで必ずこなすルーティンはありますか?

試合前、アップ前に必ずするトレーニングはあります。でもプレーボール後のルーティンはないですね。中継ぎ、抑えの場合はブルペンが結構バタバタするので、ルーティンをこなしている時間もあまりないですし(笑)。特に大事な試合になればなるほど、バタバタしますから、そこはなるべく作らないようにしています。

――中継ぎ投手として、大事なことはなんですか?

中継ぎの場合、だいたい1イニングですし、前の投手がピンチを作ったところでマウンドに上がることが多くなります。そこで大事なのは、やはり考え方、メンタル面だと思っています。もちろん技術も大切ですが、まずメンタルがしっかりしていないと難しいと思います。

――ABLに行って、そこはしっかりできていますか?

いえ、自分はまだまだ勉強中、成長中です。

――キャッチャーとのコミュニケーションはどうですか? 英語で話をしているのでしょうか。

はい、英語ですね。試合後、結構話をしています。お互い、「ここはもうちょっと、こうしたほうがいいんじゃないか」といった会話が多いです。

――日本人のバッターに投げていたときと、ABLでオーストリア人、アメリカ人などのバッターに対して投げているときと、配球は違っていますか?

自分はバッターに応じて、バッターを見ながら配球しているので、少し違うところがあります。ABLなど海外リーグのピッチャーはストレートが速いけれども、自分はあまり速くないので変化球を使いながら、いかにストレートを速く見せるかを第一に考えた配球をします。日本にいたころはストレートが多めの配球だったので、逆ですね。

――ABLでのベストピッチは、どんな場面ですか?

ベストピッチは……正直野球人生を振り返ってもないぐらい(苦笑)。いつも何かが足りなくて、苦しい、苦しいという感じです。

――ノーヒットに抑えていても?

やはり、満足はできないですね。何か足りない気持ちが、いつもあります。だから、また頑張って練習しようと思います。

――ABL自体のレベルはどう感じましたか?

アメリカのマイナーリーグと契約している選手も多いので、スイングの力とか身体能力に優れた選手がかなり見られます。日本は全体的な技術が高いのに対し、どちらかといえば力の野球。もちろんABLにも、高い技術と力を兼ね備えた選手もたくさんいますが。少しコースを間違えたらホームランになりそうな場面が多かったです。

――特にブリスベンの本拠地など、球場が狭いですよね。

そうですね。でもしっかり投げれば抑えられますから。狭い球場のときは、それを考慮しながらどんな配球をするか。それが野球の面白さでもあると思います。例えばレフトが狭いとか、どの方向から風が吹いているかとか、球場や気候条件をいろいろ加味しながら配球を変えています。

――カープを退団し、かずさマジックからトゥアタラと野球を続けて、仲尾次投手が成長できたところ、変わったところはどんな面ですか? 野球以外の面も含め、教えてください。

野球の面では、変化球が以前よりうまく使えるようになったことです。真っすぐだけでなく変化球もちゃんと使えないと、一発勝負のような場面では活躍できないと思っています。私生活では、野球関係以外の社会の方々とのコミュニケーションが増えたことですね。

 

好き嫌いのなさも世界を渡り歩く強み

写真は仲尾次投手提供

――仲尾次投手にとって、日本は「故郷」というより「外国」でしたか?

やはり「外国」ですね。自分の家族が沖縄出身なので、故郷でもあるんですが……。やはり自分が日本語をあまりうまく話せないので、まだ外国のように感じています。

――大学入学の18歳で日本へ来て以来、ずっと外国で生活しているわけですよね。外国で暮らすうえで、言葉の次に大変だったのはなんでしたか?

文化の違いが大変でした。例えば時間。ブラジルは、時間に対する感覚がちょっと緩いんです。日本はみんな時間に正確です。

――仲尾次投手のご実家のなかの文化は、やはりブラジル文化だったのですか?

ブラジルなんですけど、お正月とかお盆は日本というか、沖縄の文化がありました(笑)。

――日本とニュージーランド、仲尾次投手の感覚的には、どちらがなじみやすかったですか?

どちらかといえばニュージーランドですね。みんなオープンな感じで優しくて、言葉もまあなんとか分かるので。最初大学に行ったときは、言葉も文化も分からず、大変でした。特に漢字が全く分からなくて……。

――食事の面はどうですか?

自分は「なんでも食べます」という感じなので、食事は日本でも問題なかったです。もちろん、ときどきシュラスコとか、ご飯の上に豆を掛けた料理とか、ブラジル料理が恋しくはなりましたが。

――オークランドでは、近くにブラジル料理屋さんはありましたか?

寮から20分くらいのところにあったので、何回か食べに行きました。でも、食事に関しては好き嫌いがないほうだったので、よかったと思います。

――じゃあ英語さえマスターしたら、世界中どこに行っても問題なさそうですね。

大丈夫です。自分、小さいときにブラジル代表として世界大会でいろんな国に行ったことがあるんですが、そのときも結構大丈夫でした。

――ポルトガル語圏の人は、スペイン語も結構通じるんですか?

自分が小さいころのピッチングコーチが、キューバ人だったんです。向こうはスペイン語で話しかけて、自分たちはポルトガル語で返す感じでしたけど、そこで結構スペイン語も覚えました。ポルトガル語とスペイン語は、少し似ている部分があるんです。ただお互いの言葉でしゃべるとき、ブラジル人は困らないけど、スペイン語を話す人のほうは、あまり分からないみたいですね。

――これからのプランはどう考えていますか?

それこそ世界のどこでも、オファーさえあれば選手として野球を続けたいと思っています。年齢的に、もう30歳なので、なかなか「ここへ行きたい」と選り好みはしづらいですけれども。なるべくいい環境の場所で、野球ができたらうれしいです。
(※2月28日現在、仲尾次投手はメキシコ・リーグのテストを受けに行くことが決まっているそうです)

Profile
なかおし・おすかる●本名は仲尾次・オスカル・正樹(Nakaoshi Oscar Masaki)。1991年生まれ、ブラジル・サンパウロ州出身。178cm82kg。左投左打。カントリーキッズ高-白鷗大-Hondaを経て2016年、ドラフト6巡目で広島カープ入団。18年限りで退団後、新日鐵住金かずさマジック(現・日本製鉄かずさマジック)に所属。22/23年はABLオークランド・トゥアタラでプレーした。ABLでの成績は【レギュラーシーズン】18試合(20.1イニング)登板、0勝1敗2S、奪三振25、防御率3.54【ポストシーズン】2試合(4イニング)登板、奪三振2、防御率0.00

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