【DeNA-キャンベラ】戦略的パートナーシップのゆくえ(後編)

2019/20シーズン、キャンベラに派遣された大貫投手は、ホームステイを希望

 

今季、横浜DeNAベイスターズからキャンベラ・キャバルリーへの選手派遣が、3年ぶりに再開された。その事業の根幹となる両球団の『戦略的パートナーシップ』について、DeNA・住田ワタリさん、飯澤龍太さんにお話を聞く後編。

――球団側のお2人は、このパートナーシップの、特に過去2回の派遣の成果をどのように感じていらっしゃいますか?

住田 あくまでも私と飯澤の主観でお答えしますね。私は選手たちが主体的に「(オーストラリアに)行きます」と手を挙げた段階で、それがすでに成果であるという認識です。そこから彼らは多くを学んで帰ってきます。「異国で生活して、本当に楽しかった」という感想だけでも十分な結果、成果。その中で、19/20シーズンに参加した4人のうち一人だけホームステイを選んだ大貫晋一投手は、「オーストラリアにもう一つの家族ができました」とまで言ってくれました。さぞ素晴らしい経験ができたのだと思います。

飯澤 野球の成績に関するところを目標にしてしまうと、なかなか評価が難しいと思うんです。だから私も帰国後の選手から話を聞いてうれしかったのは、例えば大貫投手なら、ホームステイ先の家族と今も連絡を取り合っていて、向こうのお父さんが「近々日本に試合を見に行くよ」と言っていたとか。あるいは国吉佑樹投手(現千葉ロッテ)は、19年の春季キャンプにキャンベラからスティーブン・ケント、スティーブン・チェンバース両投手を受け入れたとき、率先して周囲を案内していました。11月初めの侍ジャパンの強化試合にメンバー入りした今永昇太投手は、オーストラリア代表の一員として来日していたケント投手、ロビー・パーキンス捕手に球場で挨拶したのみならず、ホテルまで会いに行ったと聞いています。私たち球団がかかわらないところで、彼らが個人的にそうして異文化交流を続けていく、人と人とのつながりを大切にしているところが、一番の成果だと私は思います。

――青柳(昴樹=外野手)さんも退団後、オーストラリアに留学を考えていたと聞きました。

住田 そうなんです。青柳君は渡豪の翌(19年)シーズン限りで戦力外になった後、オーストラリアへ語学留学をする準備を進めていました。ところがコロナの影響で、頓挫してしまった。それでも「ワーキングホリデーという制度を使い、彼の地で働きながら学べる」という気付きや、実際に行く準備をした主体的な行動が、あの派遣によって生まれたのであれば、これも大きな成果です。選手たちの気付きが新たなステップにつながり、長い人生の中での一つの刺激になってくれれば、これほど意味のあることはありません。

飯澤 やはり(21年限りで)退団して、今は球団経理部にいる笠井崇正投手も、「やっぱりオーストラリアはよかった」と、ことあるごとに話してくれます。彼の話を聞くにつけ、この派遣の意義を感じます。

――今季3度目の派遣で、キャンベラとのパートナーシップ自体をステップアップさせるような変化はありますか?

住田 1年目、2年目と、現地・キャンベラのコミュニティーともっと深く関係を持ちたいと考えてきました。前回の派遣となった19年、キャバルリーの前オーナーから「コミュニティー活動をしませんか」と提案があり、エインズリー小学校の日本語クラスに異文化交流という形で、選手たちが参加したんです。コロナで2年間、間が空いてしまいましたが、これは絶対に継続したいと私も飯澤も強く考えていまして、打診したところ、「ぜひ」と快諾していただきました。

飯澤 本来でしたら3年目には、コミュニティーとの関係をさらに広く深くしていきたいところ。しかし既に2年のブランクがありますので、交流の内容としてほぼ前回19年と同じではありますが、再開することが今回の一番の意義だと考えています。

――小学校での交流はどんなものに?

住田 日本語を勉強している小学校のクラス25名を対象に、英語と日本語を交えて自己紹介し合ったり、球団の折り紙を一緒に折ったり。あとは今回、けん玉が得意なスタッフが渡豪するので、「日本の伝統的な遊び」としてけん玉も紹介するつもりです。後半は100名ほどの子どもたちに、野球を体験してもらいます。野球体験は、先方からの要望なんですよ。

飯澤 19年も同様の2部制で、前半は教室での催し、後半はグラウンドで野球体験。全部で2時間ほど楽しく過ごしました。「100人規模での野球体験」は前回より人数も増えるので、これから住田と私とで内容を練っていきます。

19/20シーズンのキャンベラ「ジャパン・ナイト」ではチーム名、選手名共にカタカナのユニフォームを着用

――キャバルリーの試合開催日(12月16日を予定)には、また『ジャパン・ナイト』があるそうですね。

住田 18/19シーズンから続けて開催していただいています。19年はアンドリュー・バーACT(オーストラリア首都特別地域)首相や高橋礼一郎駐豪大使(当時)もいらして、盛大に行われました。キャバルリーのほうもオーナーグループが交代して最初の『ジャパン・ナイト』開催ということもあり、かなり力を入れてくれると聞いています。また“カタカナユニフォーム”の着用もあるかもしれません。こちらも、現地のファンに日本を体験して楽しんでもらえるような企画を考えていきます。

――ABL Japanでも今年はその時期、キャンベラ取材を敢行します。日本のファンの皆さんにも、現地の雰囲気を少しでもお伝えできたらと思います!

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