大隣憲司コーチ(シドニー/千葉ロッテ)インタビュー☆「気付き、そこで変われるかが未来につながる」

中森俊介、森遼大朗両投手(※森投手は12月2日に帰国)、池田来翔選手と共に、11月中旬から約5週間にわたり、シドニーへ派遣された大隣憲司コーチ。ご自身も現役時代にウインターリーグ派遣を経験している大隣コーチに、ABLで感じていることを伺いました。(12月の帰国前に取材)

 

ドミニカ派遣が野球人生のいい転機に

――大隣コーチは今回、どういう役割をもってABL派遣に加わったのでしょうか。

チーム(シドニー)に所属させてもらうとはいえベンチには入らないので、引率のような形ではありましたね。そのなかで選手たちには、秋季練習を含めてこれまで取り組んできたことを継続してもらいたいと思っていました。日本のオフの時期に、ただピッチャーが球数を投げられるからいいとか、バッターなら外国人投手のボールを見られて経験になったとか、それだけで終わってほしくはなかったので、ウインターリーグ参加にはどんな意味があるのか、折を見て伝えていこうという気持ちもありました。僕自身、現役時代ドミニカのウインターリーグに行かせてもらって、気付いたことが多々ありましたから。

――ドミニカでは、どんな気付きや学びがありましたか?

日本の球界は非常に恵まれているな、と第一に感じました。練習環境も食事も、十分に管理、提供されたなかで野球に打ち込める。それまで当たり前と思っていたことが当たり前ではなく、恵まれたことなんだと気付かされました。そこから自分がどうすべきか考えましたし、それが自分の野球人生のなかでいい転機になりました。考え方が変わりましたね。

――それが、おいくつのときですか?

27歳のときです。(福岡ソフトバンク)球団としては、当時の僕が今一つ煮え切らない状態であると考え、もう一段階成長してほしいと願って送り出したのでしょう。でもドミニカに行った翌年12勝して、さらに次の年にはWBC日本代表にも選んでいただいた。間違いなくウインターリーグが僕のプロ野球人生のなかで、大きなターニングポイントになったのだと思います。

――その点、今回派遣された選手たちは、まだ若い。感じ方が、大隣コーチのときとは少し違うかもしれないですね。

彼らも「やはり日本は恵まれていますね」とか「今まで普通にやってもらっていたことが、当たり前ではないんですね」とは口に出して言ってくれています。そこから実際行動に移れるかどうか、自分が変われるかどうかが大事。考え方ひとつ変われば、大きく成長できる選手ばかりですからね。

 

自分の芯を持って進んでほしい

――ABLの選手やリーグについては、どうお感じになっていますか?

いろいろな国から選手が集まってきていますし、評価、表現が難しいですよね。ただ、すごく自由だなとは感じます(笑)。ウチの選手たちもいい意味で、ここで試されている部分もあるのかなと思います。周囲に流されるのか、自分の芯をしっかり持って、「俺はこのために来たんだ」と鍛錬を続けることができるか。

――ピッチャー目線で見た場合、バッターに何か共通する特徴はありますか?

バッターは基本的に、変化球に弱い印象はあります。だからウチのピッチャーたちにとっては、真っすぐで行ってほしいところ、決め球でしっかり投げ切ってほしいところのメリハリが付けやすいのではないかと思って見ていますね。中森もまだいい部分と悪い部分はありますが、そこでしっかり投げ分けて三振を奪えるような投球術や投球スタイルができれば、来季以降につながる確かな自信が付くと思います。さらに、「どう見ても変化球を投げたら抑えられるな」というところで、敢えて逆に真っすぐでいってみるとか、データだけじゃない自分のピッチングもしてみてほしいですね。

――バッター目線で見ると、こちらのピッチャーと対戦することで、NPBに戻っても大いに生きる点はありますか?

ピッチャーのレベルは高いと僕は思っているんですよ。スピードの高いピッチャー、技巧派でコントロールのいいピッチャー……と、いい意味でバリエーションが多いんです。特別コントロールの悪いピッチャーもいないですし。だからバッターの池田(来翔)からしたら、ここでいろいろなタイプのピッチャーから結果を出しつつ感じることがあるんじゃないかと思います。

――大隣コーチは、オーストラリアは初めてでしたか?

いえ、僕は(京都学園)高校の修学旅行先がオーストラリア、しかもシドニーだったんです。1週間ホームステイをして、観光はオペラハウスくらいだったんですけどね。今回は町から離れたところに滞在していたので、高速を走る車中から、カンガルーを見ることもできました。あとはとにかく星がキレイでしたね。夜空を見上げると、「星ってこんなに近かったかな、こんなに数があったかな」と思うくらい(笑)。

――大人の楽しみ方ですね。選手たちもいろいろ、カルチャーショックを受けたかと思います。

何か日常と違うことが起きても、そこで臨機応変な対応ができる、そんなところが出てきてくれればなとは思っています。そこで気付くか気付かないか、それでもまだこのままでいいと思っている自分がいるかもしれないし。すべての試合が終わってから、オーストラリアでの収穫を……技術面だけでなく、私生活も含めて何を感じたか彼らから話を聞いて、僕のほうからも何か伝えてやれればと思っています。そしてこの経験を、来季の活躍につなげてくれれば一番ですね。

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