小野大夏(アデレード)投手インタビュー「日本での大会本番へ向け、一つでも多くのものを得て持ち帰りたい」

Daina Ono- PHOTO: Ryan Schembri / SMP IMAGES / Baseball Australia | Action from the Australian Baseball League 2019/20 Round 1 clash between Adelaide Bite vs Brisbane Bandits played at Adelaide Shores Baseball Complex, West Beach, South Australia

社会人野球Hondaから今季、アデレード・ジャイアンツに派遣。Honda鈴鹿・主島大虎投手の「Tiger(タイガー=虎)」に対し、「Summer(サマー=夏)」の愛称で親しまれた。アデレードでの1カ月半では、欠かせないリリーバーとしてブルペンに待機。9試合で防御率1.42の成績を残し、心身とも一回り大きくなって帰国した(※取材は小野投手、アデレード在籍時)。

――ABLへの派遣を最初聞いたとき、どう思いましたか?

「最初はもう、不安しかなかったです。同じチームから誰も行かないし、鈴鹿の主島(大虎)さんのことも、そのときは全く知らなかったので。だから過去派遣された先輩たちに、かなりたくさん話を聞きました」

――その中で実際、「これは聞いておいてよかったな」と実感した情報は?

「こっち(オーストラリア)では日本と違って全体アップがなく、いきなりキャッチボールに入るんです。事前に聞いてはいても、自分たちからしたら、ちょっとビックリするやり方ですよね。そこはみんなが来る前に自分で走ったり、体を動かしておいたりしておくようにしました」

――もしABLに来ていなかったら、11月、12月は社業に従事して、ピッチングしていない時期ですか?

「日本にいても、多少ピッチングはしていたと思います。ただ自分はこの冬、来季に向けて多めにトレーニングを入れようと思っていたので、そこは少し予定が変わってしまいましたね」

――実戦しながらのトレーニングになりましたね。小野投手はHondaに入って、2年目のシーズンが終わったところ。過去2年間を振り返って、どうでしたか?

「1年目は野球にしてもなんにしても、とにかく社会人の環境に慣れようというだけで、いろいろ考えていなかったんです。それで、ピッチング自体もあまり成長できなくて……」

――高校時代までの“貯金”でやっていたんですね。

「そうですね。でも2年目になるとき、“このままでは、来年プロには行けないな”と思いました。そこで自分の考えも、トレーニング量もすべて変えました」

――例えば、どんなトレーニングを増やしましたか?

「1年目は出されたトレーニングしかしていなかったんですが、2年目からは自分に足りないものを考え、加えていくようになりました。例えばウエイト・トレーニングも下半身を中心に鍛えましたし、ピッチングに関しても2年目はとにかくフォームを見直し、固めていきました」

――2年目までのフォームは、どのあたりが悪かったのでしょう。

「高校時代からのフォームは、正直全くピッチャーのフォームじゃなかったんです。高校時代はキャッチャーをやっていた時期のほうが長かったぐらいで、ピッチングは上半身ばかりに頼って投げていました。だから投げたあと、いつも上半身が疲れ切った感じでした。それでは体にも良くないので、真剣にフォームを固めようと思いました」

――そこで下半身を鍛えよう、と。

「もちろん下半身だけでなく上半身も必要なんですが、自分はそんなに体が大きくないので、1年目の体のままでいたら、それまでのMAX148キロ以上のパワーは出せないと思いました。パワーを付けようと自分で考えながらウエイトなどを始めて、時間は多少かかりましたがフォームも固まって、150キロを出せるようになりました」

――小野投手としては、どんなピッチャーを目指しているのですか?

「ストレートには自信を持っていますので、ストレートで追い込んで、最後はフォークかストレートで三振が取れるピッチャーが理想的です。ストレートも、自分が目指しているのは球速だけでなく伸びる球。球の回転を意識して、ヒジが下がらないよう気を付けて投げています」

――2年目の成長は、小野投手自身で「考える」ことができるようになったところがカギなんですね。配球などもキャッチャー任せではなく、いろいろ考えられるようになりましたか?

「あまりクビは振らないほうなんですが、2年目の最初のころは結構打たれたので、なぜ打たれたのか、試合後キャッチャーとたくさん話すようになりました。キャッチャーの方も厳しく言ってくれるので、自分のことが客観的に分かるようになりました。結局打たれた球は全部高め。2年目の中盤から後半にかけては、ひたすら低めの練習ばかりしていました」

――このABLに来てからは、社会人2年目に得たものを発揮できていますか?

「正直、日本とは全くバッターのタイプが違うので……。日本のバッターだったらこの高めは間違いなくホームランにされるだろうなというコースも、ABLのバッターは振ってくれるんです。一方で低め、低めを狙っていると、“そこがボールなんだ”と思うことが多いです。ABLのストライクゾーンからしたら低いんですかね」

――ABLのバッターについては、どう感じていますか?

「間違いなく日本人のほうが粘り強いというか。粘って、粘って打ってくる。ピッチャーからしたら嫌いなタイプですよね。でもストライクからボールになる変化球は、日本でもこっちでも振ってくれるので、それをいかに投げられるかというところがABLでもカギになると思います」

――とすると、このABLで得て、小野投手の引き出しに入りそうなものはなんでしょう。

「ストレートを打たれたときでも、自分がパワー負けしていない球だったと何度か感じられたので、そこはよかったんじゃないかと思います。自分の球をしっかり投げられれば、ホームランにはされないかなと思いました」

――ABLに来て、メンタル面はどうでしたか? こちらの環境の変化にもついていけました?

「昔から、新しい環境に慣れたら力をしっかり発揮できるんですが、慣れるまでちょっと戸惑うほうだったんです。でも今回は2試合ぐらいで慣れたので、少しは成長できているのかな、と(笑)」

――それも一つのお土産ですね。

「そうですね。開幕戦(19年11月22日、対ブリスベン)で投げたときはやはり緊張して、いきなり満塁を作ってしまったんですが、そこで0点に抑えられたのが大きかったと思います」

――ABL・アデレードではリリーフ専門でしたが、もっと投げたかった?

「でもイニング的には、Hondaのほうとも“そんなに長いイニングは投げない”と話をしてきていたんです。帰ってからすぐ大会がありますし、自分にとっての本番はその大会ですから。疲労をあまり残さず、ケガもしないよう。こちらで一つでも多くのものを得て、いい感じで日本に帰れればと思っています」

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