主島大虎(アデレード)投手インタビュー「ABLで手応え感じた球を加え、まずは社会人で安定した結果を」

Images are copyright of SMP Images. Images may not be copied or duplicated in any way without written permission from SMP Images / Baseball Australia

社会人野球Honda鈴鹿から今季、アデレード・ジャイアンツに派遣。名前の「大虎(たいが)」から、「Tiger(タイガー)」の愛称でファンにも親しまれた。開幕当初はリリーフ、第3ラウンドから先発と二役を担った主島投手。約1カ月間のABL生活で明らかになった、自身の未来像は?(※取材は主島投手のアデレード在籍時)

 

――今回のABL派遣については、会社からどんなお話をされてきましたか?

「僕は社会人になって3年目なんですが、まだ自分の思ったような結果は出ていませんでした。“このチャンスを生かして来年活躍できるよう、いろいろ学んで来なさい”というふうに言われてきました」

――昨年、同じHonda鈴鹿から派遣された竹内諒投手には、何かアドバイスをもらってきたのでしょうか。

「バッターは低めが結構弱いとか、緩い変化球が弱いと聞いてきました。ただ、少しでも甘くなったら力があるので、すぐ長打になったり(ホームランを)持って行かれたりするので、そうした制球力は大事だと、アドバイスをいただきました」

――生活面のアドバイスは?

「英語の面は当然ありますが、生活面では野菜不足になりがちだと聞いてきました。ホテルに共同のキッチンが付いているので、ご飯を炊いて、肉と野菜を適当に炒めて食べるようにしています」

――話は戻りますが、ではこのABLでの2カ月間で、どんなことを課題にするか、あるいは身に着けて帰ろうと思ってこちらに来ましたか?

「2年目までは、何かちょっとよくなっても活躍できないというか、完璧に力不足だったと思います。でも(19年の)終盤にかけてカットボールとツーシームが僕的にはとてもよくなってきて、打者ともしっかり勝負できるようになったので、そこの精度を上げること。それがABLで通用するのか試したいと思っていました」

――で、実際どうでしたか?

「ツーシームはまだあまり投げていないんですが、カットボールはストレートの軌道からしっかり曲げることができて、思い通りにゴロを打たせて取ることができていると思います」

――過去2年間、力不足を感じた最大の原因は、どこにあったと思いますか。

「カットボールとツーシームを覚えるまでは、得意球というか決め球というか、とにかく自信のある球がなく、中途半端になってしまったんですね。コントロールもそんなによくなかったし。で、カウントが悪くなって入れに行った球を、打たれることがかなり多かったんです。でも今は結構自信が付いて来たので、カウントが悪くなっても腕を振って、カットボールやツーシームで勝負できるようになってきました」

――ところで最初はリリーフからスタート。第3ラウンドから先発に転向しましたね。

「2回リリーフで登板したあと、なんか急に“先発ピッチャーできるか?”と聞かれたんです。最初はリリーフだけと聞いてきたんですが、自分はたくさん投げられるものなら投げたかったので、“できます”と答えました」

――それはよかったですね。

「ピッチャーが多いので、リリーフで投げても1イニングとかなんですよ。それで(4連戦の)2試合2イニング投げるんだったら、先発で4、5イニング投げたほうが経験は積めるのかなと思いました」

――リリーフから先発になって、調整の仕方も変えましたか?

「はい。リリーフは基本、いつ投げるか分からないので、あまりピッチングはせずキャッチボールで調整してたんですが、先発になってからは登板日の前々日に30球程度、ピッチングを入れてみました。それで次の2日間にキャッチボールをして、試合に入りました」

――大まかに言うと、ABLのバッターにはどんな配球がベストだと思いますか? もちろん右、左、タイプにより違うのでしょうが……。

「入りは低めに、緩い変化をさせるとか。で、どんなタイミングで、どういう球を狙って来るか様子を見て、それでカウントが取れたらラッキーだな、と。あとは大きなのを打つ、振ってくるバッターだったら、自分の得意なカット、ツーシームの微妙なズレで、ズラして打たせていくという感じですね。そういうバッターに、あまり真っすぐで勝負すると危ないと思うので、小さな変化や緩い変化のカウントが取れる球で、勝負しています」

――そこにきっちり、キレのある球をコントロールできれば問題はないわけですね。

「はい、低めに投げられさえすれば、そこはABLに来て以降、そんな完璧に捉えられたヒットはないんです。そこの精度を高めていけば、もっと抑えられると思います」

――今、理想のピッチャー像はありますか?

「僕、球は全然速くないので、技巧派として極めていきたいと思っています。19年の都市対抗で戦った鷺宮製作所の左腕・野口亮太さん。うちは1対5で負けたんですが、あの方のピッチングを見て、自分の理想だなと思いました。身長も170センチない方で、フォームにも力感がないのにバッターが差し込まれるんです。ゆったりしたフォームから球がピッと来るので、そこまでスピードがなくても、バッターからしたら何かタイミングが取りにくいんですね。簡単にカウントを取るところは取って、と配球も完璧で、ウチのチームは完敗でした。ああいうピッチャーになりたいなと思っています」

――身近な目標があるのはいいことですね。

「野口さんがカットボールとかチェンジアップを得意としていたので、僕も“そういう小さい変化が大事なんだな”と思って、こちらでもカットボールとかを取り入れてみて、手応えも感じるようになってきました」

――こちらのコーチや他のピッチャーからは何か聞いたり、教わったりしていますか?

「チェンジアップを覚えたいなと思って、投手コーチにチェンジアップの握り方や投げ方のコツを教えていただきました。あと、ライアン(・チャーフィー)のスライダーは低めにコントロールされて精度が高く、試合でも結構三振を取れてバッターが打ちにくそうだったので、“どういうイメージで投げてるんだ?”と聞いてみたことはあります」

――主島投手もスライダーは投げていますよね。

「はい。僕のスライダーは曲がりが大きい分、あまりキレがなくて、カウントを取る球種になっているんです。そのキレが上がってくればカットとの差が出て、バッターを打ち取る球にできると思うので、そこをこれから良くしていきたいなと思っています」

――主島投手にとって今の夢、これから自分の目指すところは、NPB入りなのでしょうか。

「高校のときはメチャクチャ、“プロ野球選手になりたい”と思っていたんですが、まだ(Honda鈴鹿で)3年間活躍できていないので、まず社会人で安定して勝てる、活躍できる投手になることを、今は第一の目標としています。そこで安定した結果を残せるようになれれば、プロも見えてくるんじゃないかと思っています」

 

あわせて読みたい