種市篤暉/投げる。

プロ入り2年目のシーズンとなった2018年は8月12日、一軍でプロ初登板、初先発(対オリックス)。9月17日に二軍降格を言い渡されるまでの間に計6試合、先発のチャンスをもらったが、初勝利は3年目へと持ち越された。チームの期待に応えられず、悔しさばかりが募った1カ月。球団からABL派遣の話を受けたのは、そんなときだった。

「ピッチャーとして、さらに経験を積んできてほしい」

プロ入り後、二度目の海外派遣だった。一度目は、2017年オフのアジアウインターベースボールリーグ。NPBイースタン選抜の一員として、参加した。中継ぎで中1日のマウンドも経験し、相手打線を抑えたことが、自信になった。

 

「また違う環境でやるのもいいな」と思い、即諾した。

 

週末、同一カード4連戦が行われる、ABL。オークランドでの種市のポジションは、3戦目の先発となった。金曜から始まるカードの場合は、土曜のダブルヘッダー第2戦。「高校以来」というダブルヘッダー2試合目の先発に、「待つ身は長いですね」と言いながら、調整する。

 

「ここでは“結果を出す”ことを目的にはしていません。いろいろチャレンジして失敗しても、相手を抑えられなくても、そこで何か気づければいい」

 

日本のオフだからこそ、できることを、どんどん試している。例えば、投球フォーム。1試合1試合、外からでは見分けがつかない程度、変えている。そのフォームがしっくり来れば、ストレートのキレも増すはずだ。

 

変化球は握りを少しずつ変え、曲がり幅や打者の反応を見ながら、改良を続ける。(八戸工大一)高校時代から武器としているフォークだが、第2ラウンドのブリスベン戦では、一度も三振を取ることができなかった。翌週の第3ラウンド、キャンベラ戦ではそれを課題として握りを少し変え、手応えをつかんだ。

自分で考え、投げて打たれても、そこから学べばいい

視察に訪れた、千葉ロッテ・清水直行投手コーチは言う。

 

「種市は“試合経験を積んで、感じるものがあればいい”ということで送り出しました。外国人打者に、自分のボールがどこまで通用するか。ストレートに強い打者が多く、それを待っている相手に対し、どれだけストレートを投げることができるか。大いに勉強してきてほしい」

 

キャンベラ戦では5イニングを投げ、3安打されたうちの2本が、空振りを取りにいったストレートだった。後で動画を見直すと、ストレートの質自体は、悪くない。ただ、中に入ってしまった。

 

「嫌いなコースなどのデータのない外国人に対しては、やはりコントロール重視。相手の反応やファウルした打球を見ながら何を狙っているか、自分でよく考えて、投げる球を決めていかないと」

日本では、キャッチャー任せだった配球。ここだからこそ、自分の思った球を投げてみる。それで打たれたら、学べばいい。結果だけじゃない。‟その球を投げる“ことに意味がある。

 

オークランドでは、米マイナーリーグに所属するチームメイトが、貪欲に野球の話を聞きたがる。自分も彼らのハングリーさを、その姿勢を学びたいと、心から思った。中でも最も興味を覚えたのが、彼らのトレーニング方法。身振り手振りを交えながら教わり、試している。オークランドの日本人チームトレーナーからも、これまで知らなかったトレーニング方法やケアの仕方を学んだ。日本へ帰っても一人で続けられるよう、しっかり自分のものにして帰るつもりだ。

 

清水コーチは種市に、「まずは1年間、野球をする意識を持つこと。1年間投げてみて、足りないものを見つけていってほしい」と言う。

 

種市自身、来季(2019年)、千葉ロッテの先発ローテーションに入るためには、「技術面の向上が絶対に必要」と自己分析する。ストレート、変化球、体力、すべてにおいて底上げし、さらに技術を磨いていく。技術は投手にとって、ある意味、正しい‟感覚“を身に着けること。そのためにも、このABL派遣終了まで、上がったマウンドの数だけ多くを感じ、学んでいきたい。

Atsuki Taneichi – Auckland Tuatara – Photo: SMP IMAGES.COM / ABL MEDIA – Action from the Australian Baseball League (ABL) Round 2 clash between the Auckland Tuatara v Brisbane Bandits, played in Auckland.

Photo: SMP Images

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