駐オーストラリア特命全権大使・鈴木量博さんインタビュー☆「多様性の尊重と寛容さがオーストラリアの魅力」

キャンベラの日本人選手4人、ベイスターズ関係者と共に記念撮影に臨む鈴木大使(左から3人目)

オーストラリアの首都・キャンベラのMITボールパークで12月15日(キャンベラ対アデレード戦)に行われた、「ジャパン・ナイト」。在豪の日本人の皆さんも多数スタンドを訪れ、球場でお寿司やたこ焼きが販売されるなど、今年も盛況でした。当日、試合に先駆けて始球式を行なった鈴木量博駐オーストラリア日本国大使に、お話を伺いました。

 

人と人との絆が国と国の交流に

――まずは、キャンベラ「ジャパン・ナイト」での始球式のご感想からお聞かせください。

大使館のスタッフとキャッチボールの練習はしてきたのですが、実際きちんと球が投げられるかどうか、緊張しながら臨みました。なんとか大役を果たせて、嬉しかったですね。

――大使は、野球にまつわる思い出はお持ちですか?

小学校のころ、少し草野球をしていましたが、それほど上手なほうではありませんでした。私の小学生当時はⅤ9、川上巨人軍の時代。巨人の「背番号8」、高田繁さんの大ファンでしたね。

始球式での鈴木大使

――スマートでカッコいい選手でしたね。その野球を通した横浜DeNAベイスターズとキャンベラ・キャバルリー、そしてキャンベラのコミュニティーとのパートナーシップには、どのような意義を感じておいでですか?

スポーツは、その体験を共有することで、人と人との絆を作りますよね。それは選手同士だけでなく人と人、コミュニティーとコミュニティー、国と国という形にまで交流を広げます。そうした観点からも横浜DeNAベイスターズには、日豪関係において非常に大きな貢献をしていただいていると思います。大使館としても、こうした草の根の交流をできる限り支援していきたいと考えています。

 

お互いから大いに学ぼう

――ベイスターズとキャバルリーはもちろん、日本人選手とABLの選手の間で変化球の握りを教え合うなど、お互いが多くを学び合っています。日本とオーストラリアという国同士がお互い、学び合えることはありますか?

それは大いにあると思いますね。野球を見ても分かるように、オーストラリアの強みはダイバーシティ(多様性)。個々の人々の自由な取り組みを、非常に大切にする国です。逆に日本の強みはチームプレー。そこはオーストラリアの人も、日本を見て「すごいな」と感じる部分が多いと思いますよ。

――大使はオーストラリアに赴任なさって7カ月。この国について、今まで抱いていたイメージとは違った部分が見えてきましたか?

オーストラリアについてはずっと、「アングロサクソン人の国」というイメージを持っていました。ところが実際住んでみて分かったのは、本人が移民、もしくは親が移民としてオーストラリアに来て生まれた二世が今、人口の半分ほどいるということ。そして、そうした人々に対して社会が寛容だということです。私はアメリカでの勤務経験もありますが、「移民の国」アメリカよりもさらに多様性が尊重されていることに、新鮮な驚きを感じました。オーストラリアは、まさに多様性を重視する「現代の移民の国」なんですね。

――そのなかで、大使はオーストラリアのどういうところがお好きですか?

いいところはたくさんありますが、やはり一番は人が寛容なところですね。人を受け入れるとき、相手がオーストラリア人だろうが日本人だろうが、掛け値なしに“ウエルカム”してくれるところ。「外国人だから」という扱いを受けないわけです。そこは、この国に来たあらゆる外国人にとって非常に心地よいところであり、この国の魅力だと思います。

――お互いの国の魅力が、もっとお互いに伝わるといいですね。

オーストラリアは人口2,600万の国ですから、日本にいるとなかなかオーストラリア人と接する機会はありませんよね。それでも多くの日本人が、オーストラリアは親日国だという認識は持っています。他方、オーストラリア人の旅行先として日本は人気が高いんだけれども、では彼らが日本のことをよく知っているかといえば、日本の政治経済社会については、まだまだ理解が浅い。お互いがこうして交流を深めていくなかから、お互いの国のことを理解し合えれば、よりよい日豪関係を築いていけるのではないかと思っています。

Profile
すずき・かずひろ●1961年生まれ、東京都出身。東京大学卒業後、外務省入省。2013年駐エチオピア特命全権大使、16年在アメリカ合衆国日本国大使館公使、18年北米局長(大使)、20年駐トルコ特命全権大使などを歴任。今年5月より駐オーストラリア特命全権大使。

 

あわせて読みたい