仲尾次オスカル投手(アデレード)インタビュー☆「変化球の進化と粘りのピッチングが結果につながっています」

photo: ABL Media

昨季、ABLオークランド・トゥアタラで貴重な左の中継ぎとして活躍した、仲尾次オスカル投手。今季はアデレード・ジャイアンツでABL2年目のシーズンを迎えました。トゥアタラでもチームメイトだった村田透投手とは、練習中にもよく話をしている姿が伺えます。ABL2年目での変化や、野球に対する思いを聞きます。

 

村田さんと毎日キャッチボール

――昨季、オークランド・トゥアタラでABLのシーズンを終えたあと、メキシコ・リーグのトライアウトを受けたとお聞きしましたが……。

メキシコのトライアウトを受けて、落ちました。それからはずっと、(母国の)ブラジルにいました。

――メキシコのトライアウトはどのようなもので、どういった面で合格に至らなかったのだと思いますか?

キャンプ中、1カ月ほどかけてのトライアウトでした。自分が足りなかったところは、ストレートの部分だと思います。速いだけでなく、強くキレのある真っすぐを放れないと、世界では通用しないということ。変化球でごまかそうとしても、すぐに対応されてしまいます。自分がレベルアップして次のステップで活躍するためには、真っすぐの強さとキレをもう少し上げなければいけないと実感しました。

――それからABLのシーズンまでは、ブラジルで野球をしていたのですか?

そうです。ブラジルのアマチュア野球でプレーしていました。同時に、1年ほど前からパン・アメリカン・ゲームス代表チームの練習が毎週土日にあったので、そこにも参加していました。野球以外の時間は、家の手伝いをしていました。

――昨年10月のパン・アメリカン・ゲームスでは、ブラジル代表のリリーフを務めていましたね。

ロングリリーフと、時々抑えも務めていました。「もしかしたら、先発もあるかも」と言われていたので、その準備もしていました。

――決勝でコロンビアに負けた(1対9)のは残念でした。

僕も1イニング投げたんですが、打たれました(2失点)。コロンビアはそれほど野球が強いイメージはないかもしれませんが、南米のチームは結構どこも強いんですよ。特に今回はパン・アメリカンの大会で、予選を勝ち上がってきたチームですから、やはり強かったです。

――今季、アデレードに入団した経緯は?

昨季トゥアタラでお世話になった、トレーナーの(広瀬)大輔さんがアデレードに話をしてくださって、入団することができました。トゥアタラである程度結果を出していたこともありますが、何より大輔さんのおかげです。

――アデレードというチームの印象はどうですか?

トゥアタラのときにも対戦して感じていましたが、とても強いチームですね。特にバッティングがいいイメージがあります。ピッチャーもブルペンがしっかりしていて、相手からしたら嫌なチームでした。皆、オンオフの切り替えがうまいんですよ。それも強さの秘訣だと思いました。

――村田投手やチームメイトから何か教わった、あるいは逆に仲尾次投手が聞かれて教えてあげたことはありますか?

村田さんには毎日一緒にキャッチボールをしてもらって、野球についても普段の生活についてもいろいろ教えてくださるので、とても自分の力になっています。自分は調子の波があるんですが、その波を少なくするためのアドバイスをいただきました。あとは真っすぐをもう少し強くするためのフォームやトレーニングについても、アドバイスしてもらっています。

――調子の波を少なくするには、何が大切だと思いますか?

体で勝負しているので、まず体のメンテナンスを日々きちんとすること。それから体の動きですね。体が正しく使えているかを確認する。技術面では、投球フォームの中で「ここで下半身をもう少ししっかり使えば、上半身もついてくる」という部分があるので、そのイメージを大切にしています。

――昨季のインタビューで、より強い球を投げるために、広瀬トレーナーに見てもらいながらフォーム修正をしているとおっしゃっていましたね。それは完成したのでしょうか。

よくなってはいるんですが、まだ自分で意識しているつもりでも実際はできていない部分があります。「今日はいい感じだけど、結果につながらないな」というときは、やはり球がちゃんと来ていないんですね。毎試合、自分のピッチングの動画を見直していますが、気になるときは大輔さんにメールして、アドバイスをお願いしています。

 

ブラジルの仲間や子どもたちのために

――とはいえ、今季は明らかに防御率をはじめ、全体的な数字が明らかに昨季よりもいいですよね。実際、結果が出ている要因はどんなところだと思いますか?

変化球のキレとコントロールはよくなっていると思います。昨季は真っすぐとスライダーしかなくて、苦しかった。でも今季は真っすぐはもちろんスライダー、チェンジアップ、カーブの3つの変化球のどれでもストライクが取れるので、ずいぶんラクになっています。

――監督も、「オスカーはよくやってくれている」と絶賛していましたよ。

(笑)。自分の目標は、ストライクゾーンの中で勝負してアウトを取ること。ストライクゾーンが狭かろうが広かろうが、空振りを取ってストライク、相手が振ってこなくてもストライク、という球をどんどん投げたいです。

――次は調子の波をなくすことですね。

そうですね。結果は出ていますが、投げながら結構苦しんでいるところもあるので。調子がいいように見えて、実は調子がよくない。ただ粘りのピッチングはできていますね。

――今、野球でもオーストラリアでの生活でも、楽しめているのはどんなところですか?

もちろんマウンドで投げているときが、一番楽しいです。調子がよくなくて辛いけど、やはり監督に呼ばれて、マウンドに立つのは楽しい。そして結果につながっているのは嬉しいです。あと、チームメイトとコミュニケーションが取れるようになったのも楽しいですね。

――英語は上達しましたか?

少しだけ話せるようになりました。あと、相手が何をしゃべっているか、今面白い話をしているんじゃないかとか、少しずつ分かるようになりました(笑)。海が近いので、たまにビーチへ行くのも楽しいです。

――食事はどうしていますか?

だいたい外食です。オークランドのときはブラジル料理の店まで車で行かないといけなかったのですが、ここはホテルから徒歩で5分ほどの場所にあるので、よかったです。

――オーストラリアでビックリしたこと、ブラジルと違うなと思ったことは何かありますか?

オーストラリアの空は、どこに行っても色がものすごくキレイな青色で、ビックリしています。ブラジルで自分が住んでいるところは空気が汚くて、空がこんなキレイな色じゃないんですよ。青空に限らず、自然の色が全体的に強い気がします。雲の白さも、芝や葉っぱの緑も。そういうオーストラリアの“色”が、とても気に入っています。

――まずはアデレードでのファイナル優勝。そのあとは何を目指していきますか?

自分の限界まで、野球を続けたいと思っています。より上のレベルを目指しながら、同時に自分がどこまで野球ができるか、それも追い求めたいです。

――できる限り野球を続けていたい理由を、「野球が好きだから」と言う人もいれば、「自分には野球しかないから」とか「自分は野球しかできないから」とか言う人もいます。仲尾次投手はどの理由が一番近いですか?

自分は8歳のころ、大会の帰りに車で大きな事故に遭って、手術をしたんです。3カ月ほど入院して、リハビリをしながら完璧に元の体に戻るまで5年ほどかかりました。そのとき野球ができなくなって、もうこのまま野球を辞めてしまおうかとも思いました。でも野球部のチームメイトに助けてもらって、それからも応援してもらって。皆のおかげで今、自分はここにいると思うので、「俺、野球を頑張っているよ」とできるだけ長く皆に見せたいんです。

――応援してくれた仲間への恩返しの気持ちですね。

はい。それから、ブラジルの子どもたちのこともあります。今、ブラジルでは野球人口が減っているので、少しでも盛り上げるようにしたいんです。今回のパン・アメリカンも決勝まで進んだことで結構盛り上がって、子どもたちの刺激になりましたから。

――そうなんですね。では次はWBCの本大会に進んで、いいピッチングを見せたいですね。

自分のためでもありますが、母国のためにも頑張りたいと思います。

Profile
なかおし・おすかる●本名は仲尾次・オスカル・正樹(Nakaoshi Oscar Masaki)。1991年3月28日生まれ、ブラジル・サンパウロ州出身。両親は沖縄生まれの日本人。178cm82kg。左投左打。カントリーキッズ高―白?大―Honda―広島東洋カープ―新日鐵住金かずさマジック(日本製鉄かずさマジック)―オークランド・トゥアタラ―アデレード・ジャイアンツ。今季、ABLのレギュラーシーズンでは15試合(25.2イニング)に中継ぎとして登板。3勝1敗2S、防御率1.05。与四死球3のコントロールが光る。

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