東妻純平選手(キャンベラ/横浜DeNA)インタビュー☆「純粋に野球を楽しめたABL。日本に帰っても思い切りプレーしたい」

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本拠地でその名がコールされると、スタンドから「Junpei~!!」と大きな声援が飛ぶ。キャンベラでは本職の捕手だけでなく外野、一塁手にも挑戦し、チームの四番打者も務めた東妻純平選手。オーストラリアで野球においても、また内面においても、どこか殻を破った様子が伺われるインタビューになりました。

 

ある日、打順を見たら「今日四番や」

――今回、キャンベラ派遣に手を挙げた理由から教えてください。

日本でシーズンを通してあまり打席に立つことができず、実戦の数が少なかったと感じていました。そこで今季のうちにより多くの試合に出て、より打席数を増やすことを目的に、オーストラリアへ来ました。

――実際、ここまですべての試合にスタメンとして出場し、打席にも数多く立っています。そこで何か掴めた、あるいは感覚的に良くなってきたことはありますか?

打席数を重ねることによって、自分の中で張り球など“考えて打席に立つ”ことが増えました。結構いい感じで、1試合に1本を目標にヒットを打つこともできています。ずっと打席に立ち続けること、結果を出し続けることの難しさは感じながらも、やはり生きた球を見続けることで目が慣れてきたし、対応力も上がってきたのではないかと思います。

――ある意味、日本のように細かいデータがない相手に対応する、感覚的なものも養われているのかもしれませんね。

思い切っていくしかないというか、考えすぎると逆に後手に回ってしまうこともありますね。海外リーグならではのことだと思います。

――守備については、本来の捕手というポジションより主に外野、一塁で出場しています。そこはいかがですか?

最初外野を守ったときは、すごく力が入りましたね。でも試合を重ねるにつれ、徐々に力も抜け、より周りが見えるようになってきたと思います。一塁はプレッシャーなく守ることができています。

――ABLは観客も少ないし鳴り物もないので、外野守備では打球音も味方野手の声もよく聞こえますよね。日本に帰ったら、また違った対応が必要になってくるのでしょうか。

日本だと、打球音は聞こえなくなりますね。そうすると、ABLでの打球判断よりは少し難しくなると思います。打球の見え方も、ここは周りに何もないのでボールが見えやすいんですが、日本は(グラウンドの)周囲をスタンドで囲まれているので、いろいろなものと被ってボールが見えづらいこともあるかもしれません。あとは、相手の走塁意識の差。日本では隙があるとどんどん、次の塁を狙ってきます。ABLの選手はそこまででもないので、打球に追いつく速さもまた変わってくると思います。そこはさらに練習していかないといけないですね。

――キャッチャーとしては「スローイングを課題にしている」と渡豪前のインタビューで話していましたが、そこはいかがですか?

ここではキャッチャーとして出場する試合が少ないので、主にトレーニングの中でですが、時間を見つけて自分で練習しています。

――バッティングでは、途中から四番を任されるようになりました。最初、キース監督にはどんなふうに言われましたか?

それが何も言われず、ある日スタメンを見たら、「今日、四番や」という感じでした。でも、打順はそこまで意識せずにやっています。

――四番に入って、やはりファンからの声援もますます大きくなったように感じました。日本から来て、シーズン半ばで帰国するのをファンも知っているけれども、そんなことは関係なく「Junpei~!!」と応援してくれますよね。

声援は全部、聞こえています。違う国から来ているのに、あれだけ歓迎して応援してくれる声は、純粋に嬉しいですね。

 

皆との時間を楽しんで帰りたい

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――ABLに来て、一番楽しめているところはどこですか?

純粋に野球を楽しんでいるなあとは思います。今まで、こういう感覚はなかったですね。結果として打てなかったときは、やはり悩みますし悔しいですけど、周りのみんなも“New day, New day(次の日、次の日)”と言ってくれる。日本では一度ダメだと少し試合が空くこともありますが、こちらでは次の日も試合があるので、すぐ切り替えることができるんです。日本に帰っても、ABLでできたように思い切ってやりたいと思います。

――ABLは日本と比べると全体練習の時間が少ないですよね。そこはどうやって補っていますか?

やはり打つ数が違うので、そのなかでしっかりと力強いスイングをすることはずっと意識しています。なおかつ、自分で「少し振り足らないな」と思ったときは、キース監督にお願いすると、個人的に室内練習場で投げてくれます。でも僕、こっちに来て思ったんですよ。今まで恵まれた環境があるからこそ、逆に頑張りすぎて、ネガティブになることもあったんです。やり切ることも大切だけど、こちらの短い時間のなかで「もう少し打ちたいな」「もう少し野球がしたいな」という気持ちで1日が終わって次の日、前のめりになるのもいいのかなって。

――監督に練習の相手をしてもらうとき、何かアドバイスをもらうこともあるんですか?

いろいろですね。この間は外の球がファウルになったりゴロになったりしてちょっと嫌な感じがあったので、それを監督に伝えて、正面からティーを投げてもらいました。そこでポイントが安定していないから、もうちょっと自分のほうに近くしてもいいんじゃないか、といったアドバイスをもらいました。

――そこはまた、試合で意識していくわけですか?

試合の中ではあまり意識しないですね。練習ですべて消化し、試合ではもうバットを出すだけ。考えすぎると、手が出なくなっちゃうんですよ。

――考えすぎるのはご自身の性格によるものですか?

そうですね。バッティングのときや球種に限らず、結構周りの目も気にしてしまうタイプなんですよ。よく言えば完璧主義みたいなところがあるので。

――完璧主義もいいんですけど、加減の善し悪しですよね。

自分が苦しくなるんだったら、あまり良いことではないですよね。

――そういう意味では、ちょっと(アバウトな)“いい加減”なところがあるこの国に来てよかったんじゃないですか。

そこは大きいと思います。自分が打てなかったときは悔しいけれど、そこはなんとか。言葉にするのは難しいですが、なんとか「ちょうど“いい加減”」を保ってやれている気はします。

――オーストラリアという国で「いいな」と思ったのは、どんなところですか?

人がみんな、優しいこと。特にキャンベラは治安もよく平和というか。ホームステイ先のホストも優しいし、ほかに自分に関わってくれる人もみんな優しい。チームメイトも優しいです。ミスをしても、「一生懸命やっているんだから、ミスはあるよ」という感覚なので、何にしてもすごく肩の力が抜けますね。

――海外でのクリスマスはどうでしたか?

(チームメイトの迫)勇飛さんのホームステイ先の家族と一緒に過ごしました。クリスマスディナーの家庭料理を食べて、おしゃべりして、楽しかったです。日本だとクリスマスケーキくらいですけど、ダイニングテーブルの上までいろいろクリスマスの飾り付けがしてあって。家族でテーブルを囲んでプレゼントを交換して、なんか、とても温かかったですね。

――それは最高の体験になりましたね。残りのオーストラリア生活は、どんなふうに過ごしたいですか?

皆ともっと一緒にいられたらいいなと思います。野球以外でも、ご飯に行くとか。休みの日に出かけるのも自分一人じゃなく、敢えて皆と一緒に行くのもいいのかなと思っています。

――今までは単独行動のほうが好きだった?

人見知りのところもあるんですよ。日本だと一人でいることが多いんですが、こっちでは「一緒に行こうよ」という感じで皆が誘ってくれるので、そこが新鮮だし嬉しかったです。だから野球はもちろんですが、皆との時間も大切に過ごしたいと思います。

Profile
あづま・じゅんぺい●2001年7月3日生まれ、和歌山県出身。智辯学園和歌山高から20年ドラフト4位で横浜DeNAに入団。174cm83kg。右投右打。プロ入り3年間で一軍未昇格ながら、イースタン・リーグでは特に打撃面で成長を見せている。23/24ABLでは第7ラウンドまでの全27試合に出場、101打席で打率.277、本塁打2、打点19の成績。千葉ロッテの投手・東妻勇輔は兄。

【お知らせ】横浜DeNAベイスターズ・徳山壮磨投手と東妻純平捕手の対談が、1月10日発売の『週刊ベースボール』1月22日号に掲載されます。ABLでバッテリーを組んだ2人ならではのエピソードも掲載していますので、ぜひ合わせてごらんください!!

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