徳山壮磨投手(キャンベラ/横浜DeNA)インタビュー☆「ABLで得た実戦感覚を忘れずに、2024年をスタートさせます」
ABLのシーズン前半終了となる第5ラウンドを終え、クリスマス前に帰国したキャンベラ・徳山壮磨投手。横浜では2023年途中からリリーフに転向し、来季の飛躍が期待されています。キャンベラではクローザーとして貴重な経験を積んだ徳山投手に帰国前、話を聞きました。
ウインターリーグは自ら希望していく場所
――徳山投手は今季NPB2年目のシーズンを終えてABLに来たわけですが、1年目のオフはどんな過ごし方をしていたのですか?
1年目の12月は石川(歩=千葉ロッテ)さんの練習に交ぜていただいて、1月は(早稲田)大学の先輩・和田(毅=福岡ソフトバンク)さんの自主トレに参加させていただきました。
――お手本になる先輩たちですね。そこでは、どんなことを感じましたか?
やはりお2人とも“自分の軸”をしっかり持っていて、こだわって練習していましたね。体のかなり細かいところまで気を使って、練習に取り組んでいらっしゃるのがよく分かりました。
――1年目のオフからいい学びを得て、2年目の今オフ。ABL派遣に手を挙げたのはなぜですか?
1年目のオフに、メキシコのウインターリーグ派遣の話をいただいたのですが、1年目は自分のなかでもよかったり悪かったりでうまくいかなかったこともあって、心が動かなかったんです。自分としても、そういった場所へは自ら希望していくものだと思っていましたから、メキシコ行きには参加しませんでした。
2年目の今季は、最初あまり調子が良くなかったのですが、後半から徐々に良くなってくるにつれ、「この感覚をもっと伸ばしていけたら、来年行けそうだな」と感じました。そんな中で終盤、投げられはしませんでしたが一軍に登録され、一軍の試合を間近に見て「やはりここにいなければいけない」と思い、「今のいい状態を伸ばすには、さらに実戦を積んでおきたい」「環境の違うところで、みっちり取り組みたい」と考え、オーストラリア行きを希望しました。
――過去、ABLに参加した先輩たちからは、何か聞いていましたか?
昨シーズン参加した入江(大生)さんと宮國(椋丞)さんには、「安全でとてもいいところだし、野球に集中できるよ」「行ってよかった」と聞いていたので、迷わずキャンベラに来ようと思いました。
――こちらへは、どんな課題を持ってきましたか?
後半以降の良かったときのピッチングをアナリストの方に分析してもらったところ、全体的に一軍投手陣の平均数値が出ていたんです。一軍でいけるパフォーマンスは出せていた中で、2ストライクまで追い込んでから決め切ること、ストライクのゾーンで勝負することが自分の課題だと思いました。あとは10月のフェニックス・リーグでカットボールを習得できたので、それを引き続き伸ばしていくこと。その3つをテーマにしてきました。
――実際、ABLでは課題にチャレンジできましたか?
3つのテーマについて、その感覚を覚えて帰るつもりできました。もちろんマウンドに上がった以上、相手を抑えなければいけませんが、仮に打たれても勉強になるだけと割り切ってチャレンジしています。ABLでの2カ月弱は、あくまでも自分の成長できる期間として捉えていますので。そこは今、うまくいっていると思います。
痺れる場面だからこそ、また見えたもの
――ABLでの試合で、印象的なシーンはありましたか?
アデレード戦の2戦目(12月15日)ですね。そこまで投げるたびに抑えて数字もよかったし、直前のブリスベン戦も調子がよかった。それで初めてああいう痺れる場面(4対3と1点リードした9回表、一死一塁から登板)でマウンドに行き、1人目を空振り三振に取って二死。1本ヒットを打たれて二死一、二塁。そこで迎えた打者に対して、最後のフォークを落とし切れれば三振が取れていたのに、1個置いてレフト前に打たれ、同点にされてしまいました。まだまだ克服すべき自分の課題を痛感したという点で、印象的でしたね。
――徳山投手はプロ入りまで大阪桐蔭、早稲田と野球の名門校で揉まれてきました。今回、ABLで投手としてのフィールディングやカバーリングなど非常にしっかりしているのを見て、改めて「違うな」と感じましたよ。
いやいや、それはピッチャーなら誰でも当たり前のことだと思います(笑)。自分の場合は、多分染みついているんですよね。ただ、そういう学校でやってきたからこそ、海外に来ても自分で考えて練習できるというのはあると思います。トレーニングにしてもランニングにしても、日本にいるときから周りに流されることはありませんでした。自分でやると決めたことはできるタイプだったので、学生時代から身に付いてきた姿勢や取り組みが、このオーストラリアでも生かされているのだとは思います。
――オーストラリア生活で何か感じたこと、意外な発見などありましたか?
今パッと思い浮かんだのは、(自分から見た)外国人投手がブルペンにいるときと、マウンドに呼ばれて行くときの目の色の違い。パーンっとスイッチが入るんですよね。ピッチャーは皆そうではあるんですが、そのスイッチのオン/オフがとてもハッキリしている。自分も日本でシーズン後半からリリーフに転向して、連日ブルペンに控えていましたが、ずっと気を張っていると、体も余計に疲れてしまいます。気を緩めるときは緩めて、という切り替えを改めて勉強させてもらいました。
――来季は最初からリリーフとしてチャレンジする、そのための武器をいろいろ身に付けたわけですね。
こちらに来る前に球団の方と話をして、来季は今年(23年)でいう上茶谷(大河)さんのような、「ロングリリーフという立ち位置を目指してほしい」と言われてきました。キャンベラではキース監督にクローザーとして投げることを提案され、痺れる場面でマウンドに行かせてもらって、それもまたいい経験になりました。
――日本に戻ってから、来季に向けてどんな仕上げをしていきたいですか?
シーズンからずっと投げてきているので、少し休憩を挟んで、ABLでの実戦で感じた課題の克服を1月にして、キャンプに入りたいと思っています。自主トレはトレーニングやフォームの改善といった基礎的なところがメインになりますが、そこでABLで得た実戦感覚を落とさないよう、練習を続けていきたいと思います。
Profile
とくやま・そうま●1999年6月6日生まれ、兵庫県姫路市出身。大阪桐蔭高から早稲田大を経て22年ドラフト2位で横浜DeNAに入団。2年目の昨年は中盤からリリーフに転向。終盤、プロ入り初めて一軍に昇格したが、登板機会はなかった。ABLキャンベラでもリリーフを務め、10試合に登板。10イニングを投げ、1勝1敗、防御率2.70、奪三振14の成績を残した。
【お知らせ】横浜DeNAベイスターズ・徳山壮磨投手と東妻純平捕手の対談が、1月10日発売の『週刊ベースボール』1月22日号に掲載されます。ABLでバッテリーを組んだ2人ならではのエピソードも掲載していますので、ぜひ合わせてごらんください!!