☆小池翔(オークランド)インタビュー☆練習生参加で大きな収穫。 冬にレベルアップ図り、来季のABL入りを目指す

写真左からオークランド・村田投手、小東良投手、広瀬トレーナー、仲尾次オスカル投手、土田佳武選手、小池選手(写真は小池選手提供)

2022/23シーズン、ABLでプレーした日本人選手たちに話を聞く、ABL Japan独自インタビュー。今回はオークランド・トゥアタラで、練習生兼ブルペンキャッチャーとしてチームをバックアップした小池翔選手が登場してくれました。今季は残念ながらABLでのプレーは叶いませんでしたが、来季の公式戦出場を目指し、今もニュージーランドで練習を積んでいます。

 

チャンスがあれば、どのポジションでも!

――小池選手は2022/23シーズン、オークランド・トゥアタラに練習生として在籍しました。まずはトゥアタラ入りのきっかけから教えてください。

僕が(日大豊山)高校3年のとき新型コロナが流行って練習もできず、大会も中止になりました。当初は大学で野球を続けてプロを目指すつもりでしたが、思うようにセレクションが受けられず、野球への熱が一度冷めてしまったんです。野球をやめて、アメフトをやってみようかとか、消防士になろうかとか考えていた中、小学6年生のころから可愛がっていただいていた坂元弥太郎さん(元ヤクルトほか=現在、野球スクールを運営)に挨拶にいったところ、ニュージーランド行きの選択肢を教わりました。

――坂元さんはどこでニュージーランドと繋がっていたのですか?

2017年に、ニュージーランドの野球普及のための野球教室(現トゥアタラ日本統括の清水直行さんが立ち上げた「ニュージーランド野球友の会」主催)が行われたとき、宮本慎也さん(元ヤクルト)と一緒に現地で指導なさったそうです。そこで今トゥアタラのトレーナーをしていらっしゃる広瀬大輔さんと出会ったのがきっかけと聞いています。

――なるほど。ニュージーランドという話を聞いて、小池選手は最初、どんな反応を?

ニュージーランドで野球ができるんだったら、メチャメチャ嬉しいな、と思いました。そこで即決して、「はい、行きたいです!」と答えました。ただコロナもありましたし、プロ契約ができない限り自己資金でニュージーランドに行かなければならないため、それから1年間、弥太郎さんのところでトレーニングをしながらアルバイトをし、資金を貯めました。

――そして22年、ついにニュージーランドへ。初めから「練習生」という立場だったのですか?

ニュージーランドに行って最初の3カ月間は、語学学校に通って英語を勉強しながらトレーニングしていました。10月にニュージーランドで行われたトゥアタラのトライアウトに参加し、まずブルペンキャッチャーとして採用。実際練習に加わって、その後練習生(ディベロップメント)枠に入れてもらえました。

――シーズン中は、どんなふうに過ごしていたのでしょうか。

トゥアタラのホームゲームや地元での練習日は一緒に練習をしたり、ジムでトレーニングをしたり、ブルペンでピッチャーの球を受けたりしていました。僕はこちらの「ノースショア・ベースボールクラブ」というクラブチームにも加入しているので、トゥアタラの遠征中にはクラブチームのほうでプレーしたり、練習したりと、そちらでも野球をする環境を整えていた形です。

――日本でもずっとキャッチャーだったのですか?

高校時代はショートを守っていましたが、入学して半年ほどはキャッチャーもしていました。中学時代には大会で急造キャッチャーを務めたこともありました。ですからキャッチャーというポジションには抵抗もなかったし、チャンスがあればどのポジションでも、と思っていたので、ブルペンキャッチャーからでも、なんとかチャンスを掴みたい気持ちでした。クラブチームでも、キャッチャーとショートの両方を守っているんですよ。

 

プロは自分の律し方が大切と教わった

――ABLのピッチャーの投球を受け、彼らのプレーを間近で見た小池さんが感じたABLの野球、レベルはどんなものでしたか?

やはりプロは……野球でお金を稼ぐ人たちはレベルが違うな、というのが一番の印象です。特にバッティングは、パワーの違いを感じます。もちろん外国人選手たちとはDNA的な身体能力の違いや体の大きさの違いが根本にありますが、僕は高校時代までトレーニングをほとんどしてこなかったので、そこは衝撃的でしたね。メンタリティーの面では、アメリカ人選手が多いせいか、はっちゃけるところははっちゃけえいて、面白いです(笑)。オンとオフがはっきりしています。良くも悪くも、自分のために野球をしているのが伝わってきます。

――そんな選手たちの中、小池選手がABLの選手契約を勝ち取るためには、どんな選手を目指せばいいと思いますか?

トゥアタラはABLの中でも新しく、海外からのインポート選手が多いチーム。だから慣れない場所にポンっと来てシーズンを戦うピッチャーたちを支えられるキャッチャー、彼らのことをよく理解して、寄り添えるようなキャッチャーになれたらいいんじゃないかなと思っています。もちろん、僕はキャッチャーとしてのスキルが不足しているので、ストッピング、キャッチング、送球すべてを底上げすることが先決ですけれども。そのうえで、ピッチャーが頼れる、思い切って投げてもらえるようなキャッチャーになれたらいいですね。

チームと一緒にバッティング練習(写真は小池さん提供)

――ブルペンで、ピッチャーに「キャッチャーにこんなふうにしてもらえると嬉しいんだよ」なんて話は聞いていますか?

ABLのピッチャーは球速も速いし、言い方は悪いですけど、汚い回転を武器とするピッチャーもいて、キャッチングが難しい。だから、よく「今の捕り方で大丈夫?」とか「この捕り方は気になる?」とか聞いていました。ピッチャーに気を使わせないことが、キャッチャーにとって一番大事だと思っていましたから。でもまだ僕が若いこともあってか、みんな「大丈夫だよ」と、優しかったんですよ。「もしかしたら、逆に気を使わせているのかな」ということもあったので、それがなくなれば、ブルペンキャッチャーとしても、キャッチャーとしても一つレベルアップしたことになると思います。

――トゥアタラのチームメイト・村田透投手(元巨人ほか)とは、どんなお話をしましたか?

村田さんは野球をよくご存じの方なので、機会があれば近くに座って、僕のほうからメジャーリーグのことなど、いろいろ質問させていただきました。野球に関する話では、練習方法の話より自分の律し方とか、自分の管理の仕方とか。「特に若いころは、結果だけで満足してはいけない」など、これからさらに上を目指すにあたって、とてもいいアドバイスをいただきました。弥太郎さんからも折々そんな話をお聞きしていて、共通するところも多かったですね。

 

ポジティブに、新たな舞台へ向かって

――ニュージーランドに来て、たくさんの収穫がありましたね。野球の面だけでなく、小池選手自身が何か良いほうに変わったところはありますか?

なんだか少し、ポジティブになったような気がします。グラウンド内外で、活動的になりました。いろんな選手と触れ合って、いろんなことを感じ取れるようにもなりました。日本にいたころは、新しいことにチャレンジするときも……例えばニュージーランドに来るにあたっても、「本当に行けるのかな」「実際行ったらどうなんだろうな」など、どこか常に不安な気持ちがあったんです。でも今は、「もっとうまくなりたい」「こうなりたい」「ああなりたい」とポジティブに、目標も鮮明になってきた。自分への期待とか、「やらなくてはいけない」という思いが先に立つようになりました。

――これからのプランは、どう考えていますか?

僕の最終目標はNPBの球団に入ることなんですけれども、ここ(ニュージーランド)で海外の選手と一緒に野球をして、メジャーリーグに挑戦したい気持ちも強くなってきていることは確かで……。この冬(日本の夏)はニュージーランドに残って、アルバイトをしながら野球と英語力の両方を鍛えていくつもりです。今、大輔さんに体作りからバッティング、スローイングにわたるまでご指導いただいていますので、その成果を出せるように。なんとかレベルアップして、来季ABLでプレーすることを目指したいと思っています。それが叶ったら、そこで自分の力を発揮して、また次の舞台を目指していく。1つでも2つでもレベルアップして、日本でもアメリカでも挑戦していきたいというのが、自分の未来の目標です。

Profile
こいけ・しょう●2002年生まれ。東京都出身。172cm78kg、右投左打。内野手、捕手。日大豊山高卒。元ヤクルトほか・坂元弥太郎さんの野球スクール「Yataroスポーツベース」で練習を積んだあと、ニュージーランドに渡る。22/23シーズンはオークランド・トゥアタラに練習生として参加、ブルペンキャッチャーも務めた。

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