☆ディビッド・ニルソン監督(チーム・オーストラリア/ブリスベン)インタビュー☆ 「若い選手たちの成長を手助けするのが何より好きだから、今ここにいるんです」

11月、侍ジャパンシリーズでチーム・オーストラリアを率いたニルソン監督(ⒸSMP Images/ABL Media)

11月初旬、チーム・オーストラリアを率い、「侍ジャパンシリーズ」を戦ったニルソン監督。試合は2戦2敗に終わったが、WBC1次リーグ同組の日本とのテストマッチにはなんらかの収穫があったはず。ABLのシーズン後に控えるWBCについて、そして現在ABL北東地区の首位を走るバンディッツについて、話を聞いた。

 

リアムとは直接話をしています

――まずはWBC関連の話題からお聞かせください。11月9日、10日の両日、札幌で開催された侍ジャパンシリーズの収穫はなんでしたか?

チーム・サムライは非常にいいチームで、準備も万全でした。だから、われわれが連敗した結果については、当然といえば当然でしょう。チーム・オーストラリアはほぼ3年ぶりの招集だったうえ、ABL開幕前の時期ということもあって、ほとんどチームとして実戦を行わないまま侍ジャパンシリーズに臨みました。それを思えば、私なりにチームとしての手応えはありましたが、チームとして機能するためのコミュニケーション熟成がまだまだ必要だと思います。

――WBC本戦では、選手の入れ替えもありますか?

選手の入れ替えは、やはり生じるものだと思います。より活躍できる、新しい選手が現れてくれることに、私も期待しています。

――今、ABLを戦いながらもそうした選手を探していますか?

今開催中のABLはもちろん、アメリカのマイナーリーグでプレーしているオーストラリア人選手も見ています。

――MLBホワイトソックスに所属するリアム・ヘンドリックス投手はメンバーに入るのでしょうか。

リアムと話をしたら、(WBCを)楽しみにしていましたよ。彼はこの2年、ホワイトソックスでリリーバーとして活躍し、今はオフシーズンのトレーニング・プログラムを行っています。WBCの時期が近づいてきたら、また彼と直接話をして、お互い考えていきたい。現時点で言えるのは、リアムはオーストラリア人であることに誇りを持っているし、チーム・オーストラリアの一員としてWBCで投げたいと思っているということ。ただ、そのためにはまず、彼の“体の声”を聞かなければなりません。

 

1次ラウンドを勝つためには守備力強化を

――WBC1次ラウンド・グループB(日本、韓国、オーストラリア、中国、チェコ共和国)を勝ち抜くための作戦は?

日本、韓国との試合は、間違いなくとても難しいものになりますね。とにかく投手を含めた守備を完璧にしなければいけないと思っています。

――そのために、どんな準備をしていますか?

それはトップ・シークレットですよ(笑)。ABLのシーズンが終わったらミニ・キャンプを張って、チームで情報を共有したいですね。例えばチーム・サムライの選手にしても、われわれが11月、実際に見た以外の情報が大いにあるはず。NPBのシーズン中のビデオを見るなどして、彼らの強みと弱点をつかんでいきます。

――代表監督として、WBCを勝ち抜くために何が必要と選手たちには話していますか?

まず体が万全で、壮健で、よいコンディションであることが第一です。肉体的にも精神的にもベスト・コンディションで大会に臨めるよう、準備をしなさいと話しています。

――北半球の国にとっては、シーズン開幕前となる3月に開催されるWBC。しかし南半球のオーストラリアにとっては、ABLのシーズン終了直後の開催となります。これにはアドバンテージを感じていますか?

チーム・オーストラリアにアドバンテージがあるとは思っていません。ただ、私にとってはABLのシーズンを通して選手を直接見ることができるという点で、よかったかな。ただチーム・サムライだって、オフシーズンだからといって、何もせずのんびりしているわけではないですよね。どのチームも、WBCに合わせてしっかり準備をしてくるはず。だから、開催時期は有利でも不利でもないと思います。

――日本戦で、カギになりそうな選手は誰でしょうか。

チーム・オーストラリアのどの選手もチームに必要で、欠かせない選手です。野球はチーム・スポーツ。だから私は個々の選手の名前を挙げるのは好きではありません。チームに20人選手がいれば、1番から20番まで全員が大切な選手だし、全員がチームの一員として自覚したプレーをしてほしいと考えています。

 

バンディッツはすべてにおいてバランスがいい

――次にブリスベン・バンディッツの監督としての質問をさせてください。バンディッツは今、ぶっちぎりで北東地区の首位(第6ラウンド終了時点で20勝4敗)を走っています。なぜこんなに強いのですか?

投打、攻守、経験豊富な選手と若手選手、スピードとパワー、すべてにおいてバランスがいいと思います。とはいえチャンピオンシップを取るには、投手力をより整備しないといけないですね。

バンディッツの試合前、打撃練習でバッティングピッチャーを務めるニルソン監督

――ニルソンさん自身は元メジャーリーガーで、(MLBの)オールスター・プレーヤー。スポーツ・オーストラリアの殿堂入りもしたレジェンドです。正直、毎日プールサイドで優雅にビールを飲んでいてもいいような存在だと思うんです。そのニルソンさんが、チーム・オーストラリアの監督だけでなくバンディッツの監督も務め、こうして若手選手相手に自ら打撃投手をする日々を過ごしているのはなぜですか?

面白い質問ですね(笑)。私はバンディッツの本拠地・ブリスベン出身だし、若い選手の成長を手助けするのが何より好きなんです。プールサイドにいるよりね(笑)。神様は私に、後進を手助けできるように、この才能を与えてくださったのだと信じています。

――これからのオーストラリア野球発展のためには、何が必要ですか?

世界ランキング(現在WBSCランキング10位)を上げること。1人でも多くメジャーリーガーを出すこと、そしてNPBにも選手を送り込めればいいですね。もちろん、より充実した練習施設とスタジアムも必要です。よりよい環境があれば、いい選手の輩出にもつながるはずですから。

David Wayne Nilsson
1969年12月14日生まれ。オーストラリア・クイーンズランド州ブリスベン出身。現役時代は捕手、外野手としてMLBミルウォーキー・ブルワーズで活躍。1999年、オーストラリア出身選手としては初めてオールスターゲームに出場した。2004年のアテネ五輪で日本を下し、銀メダルを獲得したときの代表捕手。2010年からABLブリスベン・バンディッツを率い、監督としての手腕を買われて18年、チーム・オーストラリアの監督に就任した。22年はアメリカ独立リーグ、レイクカントリー・ドッグハウンズの打撃コーチも務め、二足ならぬ三足の草鞋を履いている。

あわせて読みたい