宗佑磨(メルボルン)選手インタビュー「場所が違っても、自分のやるべきことは同じです」
第5ラウンドを終わったところでの打率.382は、リーグ2位。攻走守すべてにおいて、ハイレベルなプレーを見せている。レギュラー定着を狙う来季に向け、どんな意識を持ってABLでの日々を過ごしているのか。宗選手に聞いた。
――ABLではずっと打率3割超の数字をキープしています。好調の秘訣はどこにあるのでしょうか。
「別に好調というわけではないですよ。こうしてウインターリーグに参加させてもらっていますが、日本にいれば、時期で言ったら今は自主トレの期間。だから結果がどうこうというよりは、まずトレーニングを最優先にしています。数字のことはあまり考えていないですね」
――球団が宗選手をABLに送り出した意味、何を球団に期待されているのか。どんなふうに感じましたか?
「サードの守備もおそらくあるとは思いますし、あとはバッティング。19年はその前の年より一軍出場が20試合ほど少なかったので、そういう面で来季のためを思って期待してくれたのだと思います」
――サードの守備は少しでも多く実戦を重ねておいてほしい、ということですよね。実際守ってみて、サードはどうですか?
「難しいですよ。(以前守っていた)ショートも難しいけれど、サードはまた違った難しさがあります」
――複数ポジションを守って、出場機会を増やしてほしい意図が球団にはあるのでしょうか。
「いや、僕はユーティリティーになるつもりはありません。自分としては、外野で勝負したいと思っています」
――ではご自身ではここで何を吸収して、あるいは何をやって、その成果を日本に持ち帰りたいですか?
「まずは体のコンディショニングですね。しっかりとした体づくりをすることをメインで考えています。あとはバッティングの基本となる形。それは毎日の練習で少しずつ積み重ねていくものなので、その反復ですね。それに対して、結果は置いておいて、試合で自分がどう反応できるかという確認の毎日です」
――打席で日々、バッティングの確認作業を続けている、と。
「正直、今ここで数字が出ていても、シーズンの結果には直結しません。だから、自分のフォームの確認だとか、そういうものを優先に考えています」
――こちらのピッチャーは、フォームも日本人のピッチャーとは違うし、投げる球の傾向も違う。その中で数字が出ているということは、宗選手にとって自分のバッティングはできているといっていいのでしょうか。
「ピッチャーのレベルや質だけで言ったら、やはり日本のほうが高いと思います。でも相手がどうあれ、自分のバッティングをしっかりできればいいなと思ってます。自分の形、ですね。それがやっぱり大事なんですよ。相手が替わっても、自分のやることはずっと一緒。そこは変えることなく、という感じですね」
――ところで宗選手は、環境が変わっても割と大丈夫なほうですか?
「いやいや、最初はちょっときつかったですよ」
――どのへんが一番、きつかったですか?
「もうなんか体がだるくて、しんどいなあと思っていました。ご飯も食べられなかったです(苦笑)」
――皆さん、自炊でしょう。
「基本的に自炊ですね。でも作るのは佐野(皓大)、西浦(颯大)。僕は食べるだけです」
――お手伝いしないんですか?(笑)
「片付けは僕が率先してやっていますよ。やらないと、いつか佐野にキレられると思います(笑)」
――周りが外国人ばかりだからとか、異文化の中にいるからといって、物怖じするようなところは、ここまで全くなかったですか?
「最初は僕、ちょっと緊張していましたよ(笑)。ずっと緊張していました。なんか慣れねえなあとか思って。やっぱり練習の雰囲気も、練習内容も全く違いますから。日本っていっぱい練習するじゃないですか。こっちは急に始まって、パッと終わるので、“ああ、足りないな”と思うとか。そのぐらいですかね。変な居にくさとかはないんですけれども」
――足りない分は、自分たちで練習を補うしかないんですね。
「(ジョン・ディーブル)監督やスタッフの方にかなり投げてもらえるので、あとは自分たちでという感じです」
――他のチームメイトとはどうですか。例えば、ちょっとこんなことを聞いてみたとか、こういう姿を見てちょっと勉強になったとか。
「やはり参考になることはありますよ。自分さえその気になれば、得るべきものはいくらでもあるので。例えばウチにはメジャー・リーグを経験した選手も何人かいます。デルモン・ヤングなんか、体が強いですよね。体の力が強いから、あれだけの打球が打てるし、メジャーである程度の成績を残せる技術力もある。バッティング練習もトレーニングも、すごく意識してやってるんですよね。そういう部分が参考になるなと思って見ています」
――試合前の練習も一人、黙々とやっていますね。
「もうずっと、ウォーミングアップはあんな感じです。トレーニングも一人黙々とやっている感じ。自分のルーティンを持っているんでしょうね。彼を見ていて、そういうルーティンは大事なんだなと改めて思いました」
――残りの時間で、あとはどんなことを学んで帰りたいですか。
「今までやってきたことの積み重ねだと思っているので、バッティングで自分が意識していることとか、そういうものを入れ忘れないように、少しずつ前進していければと思っています」
――日本に帰ってからのほうが、過ごし方が難しい部分もありそうですね。
「帰ったら、寒いですよね~。でも、だからといって何を変えるでもないです。しっかりトレーニングして、走って。やることは別に変わらないです」
――また自分の場所に帰るだけ。
「そうですね。今は違う場所にいるけれども、やっていること、自分のやるべきことは同じですから」