DeNAの戦略的パ―トナーシップとは【第1回】
選手の自主性が、成長につながる――横浜DeNAベイスターズとABLキャンベラ・キャバルリーの新しい試み
2018年7月、横浜DeNAベイスターズとABLキャンベラ・キャバルリーの『戦略的パートナーシップ』締結が発表された。業務提携の第一弾として2018/19シーズン、キャバルリーに今永昇太、三上朋也、国吉佑樹、青柳昴樹の4選手を派遣する。この『戦略的パートナーシップ』とは、どのようなものか。DeNAベイスターズ側の“戦略”を、この事業に携わるチーム統括本部チーム戦略部・人材開発コーディネーターの住田ワタリさんに聞いた。(※取材は今永、三上両選手合流前)
――今回、キャンベラ・キャバルリーと『戦略的パートナーシップ』を結び、選手をABLに送り出しました。他球団では「ABLに選手派遣」と、あくまでも選手の武者修行的意味合いが強いのですが、DeNAベイスターズの場合は、「球団同士の業務提携」ということが前面に押し出された協力関係になっています。どのような経緯があったのでしょうか。
「DeNAベイスターズでは2012年から、台湾で行われているアジア・ウインターリーグに選手を派遣してきました。その中で、ここ数年はそれに続く次のステップを模索してきたわけです。つまり、選手に『武者修行してこい』というだけでなく、海外の野球を知り、現地の生活に溶け込み、その土地の文化を知る。異国での生活を体験することによって、将来自分たちの役に立つ、自分たちの人生における何らかのきっかけにしてほしいという、大きな枠組みを考えました。そこにABLがピッタリ合った、ということです。昨年11月、12月にそういった話が出て、球団関係者が実際に現地を何カ所か回った中で、『(キャバルリーは)フィーリングが合った』と話をしていましたね。3月の侍ジャパンと豪州代表の親善試合で豪州野球連盟のCEOとも話をし、ミーティングを重ねて、最終的にキャバルリーが『一緒にやりましょう』と言ってくれました」
――今までDeNAベイスターズといえば、筒香嘉智選手や乙坂智選手が中南米のウインターリーグに参加していたことから、中南米方面を向いているのかなというイメージがありました。それは球団として中南米のほうを向いていたのでなく、選手個人が選んでいたということでしょうか。
「そういうことですね。筒香も乙坂も自分自身でリーグを選んで参加を希望し、それを球団が了承した形です。そういった選手側からの需要と、オフの使い方のオプションを増やしたいという球団側の考え双方があって、今回の業務提携につながりました。野球のレベル、リーグのシステム、地域の安全性など踏まえてみても、ABLは先ほどお話しした台湾からの次のステップに合致するのではないかと思います」
――他球団の過去の派遣例は参考になさいましたか?
「各球団の担当者に、電話でお話は聞きました。特に、選手をどうやって派遣するかは、いろいろ参考にさせていただきました。『どういう選手を派遣していますか?』『なぜその選手を派遣しようと思いましたか?』とは、全チームに伺いましたね。結果として、我々は過去の事例と逆のやり方を選んだのですが……」
――逆、というと?
「基本的には“プロスペクト”といわれる、将来を期待される選手を球団側が選んで、『行きますか?』と声がけをする。そこは、『(もちろん)行きますよね?』という球団側の希望があって……。我々は“主体性”をうたっているので、まずは“行きたい選手”を募ったわけです。外部では、『手を挙げる選手はいないんじゃないか』という声のほうが多かったですよ。球団側が『成長してほしい』と思う選手を選び、その選手を派遣したほうが、目的がはっきりしている、という声も多かった。しかし、我々の考え方はそうじゃない。オーストラリアで野球をする、現地での生活の中で、自分たちで何かを考える、そこで何かきっかけをつかんでほしいという大きな目的がありましたので、選手側の希望を募りました」
(第2回につづく)