大貫晋一(キャンベラ)投手インタビュー「“長いイニングを投げる”ため、いいルーティンを見つけて帰ります」

PHOTO – Brett Fewson | SMPIMAGES.COM / ABL. Action from the 2019/20 Australian Baseball League (ABL) Round 5. Clash between the Canberra Cavalry and Brisbane Bandits at MIT Ballpark in Canberra, ACT. This image is for Editorial Use Only. Any further use or individual sale of the image must be cleared by application to the Manger Sports Media Publishing (SMP Images)

ルーキーイヤーの2019年は、横浜DeNAベイスターズ投手陣3番目の6勝を挙げながら、たびたびの二軍生活を経験。プロ初めてのオフも休まず、ABLフルシーズン参加を決めた。キャンベラでは単独、地元家庭にホームステイ。その決意に込められた、大貫投手の思いを聞いた(取材は19年12月末)。

――ABL派遣に手を挙げた理由から聞かせてください。

「シーズン中、自分の中でスタミナ不足を感じた試合が多かったんです。オーストラリアは季節も真逆なので、オフ期間中もこうして試合で投げることができます。そこで“長いイニングを投げる”という目的を持って、こちらに来ました」

――その目的のため、こちらで調整方法など何か意識して試みていることはありますか?

「ここでいいルーティンを見つけて帰りたいな、と思っています。前半はチーム事情で中継ぎになってしまいましたが、それはそれで1週間決められたルーティンを自分で何がいいのか試行錯誤しながら、いい方向で調整できているとは思います。後半は先発に入りますので、より良いものを見つけて帰りたいです」

――すると今回「フルシーズン参加」を決めたのは先発できる、できないの事情も関係しているのでしょうか。

「はい、前半は先発できないと聞いていたので、最初からフルシーズンのつもりで手を挙げました」

――フルシーズンですと帰国後、春季キャンプまでほぼ休みなしになります。そのへんも覚悟のうえで、ABLでの調整を選んだんですね。

「(19年の)ルーキーなので、オフを過ごすのも初めて。正直、昨季は70イニングぐらいしか投げてないので、そんなに休んでいられないというか……。来季、もっといい結果を残すためにも、(日本の)休みの間も実戦でバッターと対戦することによって、昨季の課題をクリアするのが一番いいかなと僕は思いました」

――こちらの野球を経験して、何か新しい発見はありましたか? 「こういう野球もあるんだな」とか、こちらのバッターと対戦しての気付きとか。

「こちらのバッターは、あまりバントしないじゃないですか。特にうちのチーム(キャンベラ)は、ほとんどバントしないですよね。しかも、当たれば豪快に飛んでいく。どこかメジャーリーグみたいというか、パワーのある野球だなとは感じています」

――そういうパワーヒッターに対するとき、どの球が有効とか、こういうコースが有効とかというものはありますか?

「技術的な面で言うと今、カットボールの練習もしているんです。ただ、こちらのバッターに対してはカットボールでファウルを打たせるとか、初めはなかなかできなかったので、早く自分のものにしたいですね。自分の中で何が通用するかは、まだいろいろ試してみているところです」

――カットボールはいつから投げ始めたのですか?

「昨シーズン終盤ぐらいから、投げ始めました」

――それは、新しい球種の必要性を感じたから?

「左バッターの被打率が高かったんです。左バッターの懐に食い込む球があれば、相手にとってはおそらく嫌な球になるかなと思って。それで取り組んでいます」

――こちらでは、ホームステイを希望したと聞いています。派遣自体を経験した選手も少ない中、敢えて誰も経験していないホームステイを選んだのは、どういう目的があったのでしょうか。

「英語もそうだし、日本とは違う文化的な部分も、何か学びたいなと思いましたね。せっかくキャンベラに2カ月近くいられるわけですから、日本語を話せない環境に自ら飛び込まないと得られないものもあるだろう、と。それで、ホームステイを希望しました」

――大貫投手のホストファミリーは、どんなお宅なんですか。

「ご夫婦に子どもが2人、犬が1匹。すごくいい家族で、いつも優しく話しかけてくれるし、いろんなところへ連れていってくれます。もともとキャバルリーのファンで、シーズンシートを持っているんですよ」

――どんなところに連れていってもらいましたか?

「ティドビンビラ国立公園とか、キャンベラ動物園とか。あとは、そこのお父さんの職場のパーティーみたいなところへも連れていってもらいました」

――ホストファミリー宅か、あるいはチームの中で文化の違いなど感じるところはありました?

「どっちもそうですけど、あまりせかせかしていなくて、おおらかですよね。日本だと時間をきっちり守ること優先で、いつも結構忙しくしている感じですが、真逆というくらい違います。学校訪問に行ったときも、外で授業を受けているとか、いろんな面でおおらかさや自由さを感じました」

――大貫投手は大学、社会人と、プロ野球界に入る前に、別の世界やいろいろな人を見て学んできていますよね。また年齢的にも、ちょうどこうした異文化の中で多くを吸収できる、ちょうどいい時期のように思いますが……。

「僕がもうちょっと若かったら、遠慮などして、違ったかもしれませんね。でも今なら自分から何か話しかけたり、話しかけてもらったりして、いろんなことを勉強したいなと思いますし、実際今、それができていると思います。野球以外の面でも、非常にいい経験になっています」

――帰ったら野球の面だけでなく、何か変わりそうですか?

「もしかしたら、もっとおおらかになっているかもしれないですね(笑)」

――それはもしかしたら「野球でも、もうちょっとおおらかになったほうがいいかも」と思っています?

「たまに気にしすぎることもあるので、あまり細かいことは気にしないようになれるんじゃないかな、と(笑)」

――こちらで単身、現地のご家庭に飛び込んでいっただけでも、すでに何か変わっているんじゃないですか?

「いやあ、それはまだ、そんなに感じていないですね。たぶん次のシーズンがすべて終わって初めて、自分がここで成長できたかどうか、分かるんじゃないかと思います」

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