笠井崇正(キャンベラ)投手インタビュー「いろいろ試した中から、自分の“戦う形”を決めて帰りたい」

photo by Megumi Maeda

2019年は横浜DeNAベイスターズの一員となって初の開幕一軍入り。16試合に登板した。そこで感じた課題――制球力と体力面のレベルアップも含め、「引き出しを増やしたい」とABL参加に手を挙げた。その引き出しに、どんな“お土産”を詰めつつあるのか。渡豪1カ月の途中経過を聞いた(取材は19年12月末)。

 

――まずはABL派遣に手を挙げた理由から教えてください。

「逆に“行かない理由はないかな”と思いました。オフの間も、実戦で投げることができる。それも、ある程度こちらの要望を聞いてもらえて、ペースをコントロールできる。そして実戦の合間には、しっかりトレーニングもできます。僕は日本で特別なトレーニング場所を設けていませんし、それなら球団にバックアップしてもらいながら、2カ月とはいえ現役の間に海外生活という経験もできて、実戦もトレーニングもできる、オーストラリアに来ようと思いました」

――昨季(18/19年)派遣された、国吉(佑樹)投手に背中を押されたと聞きました。

「“絶対行ったほうがいいよ”とは何度も言われました。実は僕、“行こうかな”とは一昨年から考えていたんです。ただその前年(プロ1年目のオフ)、台湾のウインターリーグに行ったときにも育成練習があったので、一度自分でオフの練習をしてみたかった。それで一昨年は、そちらを選んだという経緯がありました」

――その国吉投手からは、キッチン担当も受け継いだそうですね。

「そんな大層な、おしゃれな料理を作るわけじゃないですよ(笑)。僕は(早稲田)大学時代も1人暮らしをしていて、生活の基本的なことは普通にできるので」

――キャンベラでは中継ぎを担当していますが、ご自分のルーティンなどできていますか?

「試合前のアップなどは日本と同様ですが、こちらに来てから登板前1回で肩を作っていく、という形でやってみています。日本だったら、ブルペンに来て軽くキャッチボールをして、マウンドに行く前にもう1回肩を作るんですけどね。実際1回でやってみたら、僕は特に問題がなかったので。1回でもできるんだという、自分の引き出しの一つになりました」

――オーストラリアのコーチは試合の球数を重視していて、「なぜ日本人は試合前、そんなに球数を投げたがるの?」という考え方ですよね。そのあたり、何かコーチと話をしたのでしょうか。

「いえ、そのことについては特別、話はしていないですね。こちら(オーストラリア)に来て自然に、というか。最初から、他の選手と同じやり方にしてみました。そのためかどうかは分かりませんが、ランナーがいる場面、回の途中からという登板は少し多くなっていると思います」

――ABLの野球、あるいは選手を見て何か新しい発見や、感じたことはありますか?

「J.J.(フーバー投手)とかフィル(フィリップ・ファイファー投手)とか、メジャーでの経験があるピッチャーや、これからメジャーに上がるようなピッチャーを見ていて、カウント運びはやはり大切なんだなと感じました。特別な球をどうこうというよりは、どこにストライクを入れて、どこでボール球を使うか。そういったところが彼らはとても上手だなと思いましたね。ABLのバッターからは、カウントの取り方を考えさせられました。彼らは仕掛けが早いので、カウントを取りに行った球をヒットにされて、こちらがちょっと苦しくなることがあって。ボールゾーンに投げてストライクを取るなど、策を練っています」

――そのあたり、キャッチャーとのコミュニケーションにも関わってきますね。

「キャンベラでは3人のキャッチャーに受けてもらっているんですが、最初に自分は何が得意球で、どういう組み立てをしたいか、どこに構えてほしいかなど、紙に書いて渡してあるんです。折々相談もしていますので、そこは特に問題は感じてないですよ」

――笠井投手は割と環境に順応しやすいほうなのでしょうか。

「それでいろいろやってみて、引き出しを増やしてもらえたら、と思っています。日本では僕もある程度決まったやり方でやりたいですから。例えばブルペンで1回だけ作っていくとなると、“本当に大丈夫なのか”と周囲も思うでしょうし、それで打たれたら“やっぱりしっかり準備したほうがよかったんじゃないか”と自分も思ってしまう。日本ではどうしても自分も守りに入るというか……。でもこちらでは、試してみて失敗したら“この方法は失敗だったね”で、次にいけるので。そのへんはうまく対応できています」

――派遣時期を「第8ラウンドまで」としたのは、なぜですか?

「当初、第7ラウンドまでと希望を出していたんです。少しは投げない期間が欲しくて。ただ、そこでキャバルリーから“もう1ラウンドいてくれたら嬉しい”と言われたので、1ラウンド延ばしました」

――最終的にはどういう状態で帰国して、日本のシーズンにつなげられたらベストでしょうか。

「第6ラウンドまでは自分の中で試したいことをいろいろ試して、最後の2ラウンドはもうある程度、“今季はこの形で戦う”というところを決め、その形でしっかり結果も出したいですね。そしていいイメージのまま日本へ帰って、キャンプに入れればと思っています」

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