平沢大河、“待望の1本”

ABL第3ラウンド、対キャンベラ第4戦で、平沢大河(千葉ロッテマリーンズ)にABL初ヒットが飛び出した。試合後、ABL Japanに「やるべきことを、またやっていきたい」とコメントしてくれた、その「やるべきこと」とは――。“1本”にかける、平沢の想いを追った。

 

“待望の1本”だった。

11月23日、ニュージーランド入り。翌24日からのホーム開幕、対ブリスベン4連戦は、ノーヒットに終わった。30日から、キャンベラを迎えてのホームシリーズ4連戦も、3戦目まで快音は聞かれなかった。

ABLの公式サイトでは、「千葉ロッテマリーンズの若き実力派スターが、トゥアタラ入り」と華々しく紹介された。トゥアタラはABLに今季誕生したばかりの、いわば寄せ集めチームである。NPBのトッププレーヤーが要のショートを守り、活躍してくれれば、戦力面でも興行面でも頼もしい。

ところが、平沢のバットは湿りっぱなしだった。途中、代打を送られた試合もあった。本拠地・オークランドのスタンドでは、「カモン、タイガー!!」と地元ファンも声を上げて応援したが、なおノーヒットは続いた。

 

ようやくヒットが出たのは、対キャンベラ4戦目。 ひときわ大きな拍手と歓声に迎えられ、平沢はファーストベースに達した。「初ヒット」にやきもきする日本のファン同様、地元ファンも「まだノーヒット」ということを気にかけていたのだ。

「ホッとした?」

試合後、そう聞くと平沢は「ホッとはしましたけど……」と言って、いったん言葉を切った。

「これからも変わらず、やるべきことをやっていくだけです」

 

本来なら心身ともオフに入る、この時期。球団から「こういう機会があるけど、行ってみるか?」と声を掛けられ、即決した。

「球場、ピッチャー、バッター……いろいろな環境、プレーを経験することは、きっと自分のプラスになると思いました」

18年、一軍に定着し、試合出場の機会も得てはいたものの、19年の自分がどうなるか。今の状況ではわからない。レギュラーを取る絶対的な力があるかといえば、そこには至っていないだろう。

まだまだ「野球がうまくなりたい」。そうすれば自ずと、レギュラーポジションはついてくる。

 

ABLに来る前の秋季キャンプでは、球の待ち方、タイミングの取り方をテーマに取り組んできた。『タイミングの取り方』はバッターにとって、永久不滅ともいえるテーマだ。平沢自身、「タイミングの取り方が(バッティングの)すべてかな」と言う。ABLに来てからは、外国人選手たちのタイミングの取り方にも注視するようになった。

「こっちの人は、タイミングの取り方がシンプルですね。足の上げ方が小さいです」

そういう方法もあるんだな、と確認し、自分の引き出しにしまった。今は、秋から取り組んでいるテーマを、ぶれずに続けていかなければならない。

 

「プロは結果がすべて」といわれる中、幸いにもマリーンズの首脳陣は試合前の準備、練習の仕方などの“プロセス”を見てくれる。オークランド・トゥアタラのミンツ監督も同様に、平沢の取り組みを尊重してくれている。一方で、「やって当たり前」の一軍選手としてここに送り込まれた。人知れずプレッシャーを受け、肩身の狭い思いもしたはずだ。

 

ヒットが出ない毎日も、「結果だけを求めて、ぶれてはいけない」と自分自身に言い聞かせてきた。どんな形であれヒットが出れば、ファンは喜び、安心してくれるだろう。そんな中、生まれたファン“待望の1本”。

だが――平沢にとってのゴールは‟今、この1本“ではない。今回ABLに来た目的は、来季以降、マリーンズでしっかり結果を残すこと。この先1本、また1本と、納得のいく1本を積み重ねていくための、確固たる土台を作っておくことだ。

Taiga Hirasawa – Auckland Tuatara – Photo: SMP IMAGES.COM / ABL MEDIA – Action from the Australian Baseball League (ABL) Round 2 clash between the Auckland Tuatara v Brisbane Bandits, played in Auckland.

Photo: SMP IMAGES.COM / ABL MEDIA

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